まほうの西瓜
今年はまだたべていません、西瓜。

  • うたたね
  • 2014/07/28 (Mon) 22:24:42
まほうの西瓜
冷蔵庫で冷やしておいたから。

ひと切れだけ

食べた。

輪型に並んだスイカが仕切りの上段を埋めていた
懸賞でもらったガラスの器に収まって
ひと切れが 大きい
ちゃんと放射状に切ったから
均等に甘いと思うよ

シンクの上のつり戸棚
じゃなければ 引き出し
一段目にも二段目にもなくて ふたたび
裸のまましまう

*

冷蔵庫で冷やしておいたスイカが
今日になり明日になり なかなか
減らないから
水分をとらずに朝から
スイカだけ摂っている

夜明けとともに鳴く蝉は 何を
怒っているのだろう

ガラスのふちで息をひそめて
したたる指が 昆虫のように思った

*

冷蔵庫で冷やしておいたから ひと切れだけ食べた
ちゃんと冷やしておかないと腐るから
いつもちゃんと冷やしている

几帳面なスイカは丁寧に 実と
種と皮を着こんで器の上に並んだ

等しい錐体の曲線をたどって ふたたび
一定の和になった
  • メチターチェリ
  • 2014/07/29 (Tue) 04:31:45
まほうの西瓜
(ま)真っ赤な太陽を全身に浴びて

(ほ)他では滅多に手に入らない

(う)熟れていて食べ頃の西瓜が

(の)農園一面に咲き誇っています

(す)酸いも甘いも食べた人によって

(い)意外と味覚が異なる魔法の西瓜

(か)隠し味は私から貴方への愛です
  • ゆひゃ
  • 2014/07/29 (Tue) 13:13:18
まほうの西瓜
さんかくに切った西瓜をかじる
父は塩を少しふりかけて
わたしと弟はそのままで
時々赤透明な汁がぽたりとこぼれて
畳のささくれに染み込んでいた


西瓜を食べてたら夏が来て、
西瓜を食べてたら夏が終わる
いつの間にか、終わる


冷蔵庫から半月型に切られた西瓜を出す
包丁を入れる
半分に切り半分に切り半分に切る
小さく小さく小さく小さく
ミニトマトくらいの大きさにして
皿に盛る
フォークを用意して、声をかける
あの頃のわたしよりもっと小さな子どもは
不器用にフォークを使って西瓜を食べる
そういているうちにきっと、夏は終わる


まるで嘘みたいに、ふしぎだ
  • えい
  • 2014/07/29 (Tue) 13:47:36
まほうの西瓜
むかしむかしあるところに こどもを たくさん産んでは
いけない 国がありました ところがある日、国中の女達
おなかが大きくなりました みんな西瓜のような膨らみ
まくどなるどの定員さんも ろってりありの美人お姉さんも
ぱんぱんに大きな御なかで コンコンと 良い音がします

ああよかった子供でなくて ただの西瓜になっだけだわ
などと女達は安心して 休み時間になるとお腹を見せ合いました
そうこうしているうちに この国ではお肉を売ってはいけない 
オフレがでました 女達の心は すっかり西瓜なので
お肉なんて食べたいなんておもいませんから 平気です。

ああよかった 化粧室で女達はお互いのお腹を見比べました
まだ未熟なお腹の娘のお腹には やらわかい産毛が気持ち良い
そこそこ充実してきた女のお腹は 緑と黒色がうっすらと現れます
すっかりパンパンになった母のお腹の下は ピカッと照かるのです
おとこたちは その頃 どうしていたのでしょうか

女達は みんな 西瓜になっているというのに 
男たちは おとなりのくにが 戦争をしたがっていると噂してました
たまにお腹がはじけて 真っ赤に熟れた甘い汁がほとばしっています
けれど その国の人々にとっては見慣れた光景なので気にもしません

むかしむかしあるところに こどもを たくさん産んではいけない国がありました
とても豊かな国でした たくさんの女の人たちは
真っ赤な情熱の色をした甘い歌を歌っています。
わたしたちは中身は赤い西瓜です♪そんな唄でした。
その国の人々は、ついに みんな西瓜人間になってしました。
西から太陽の昇る国不思議な国でしたが、
本当のお話です。その証拠に いまでも西瓜は西の瓜と書くのです。
  • るるりら
  • URL
  • 2014/07/29 (Tue) 15:13:25
まほうの西瓜


小川に冷やしておいた
西瓜が浮かんでいた
その球面上には
一匹のバジリスクが乗っていて
川面を難なくわたっていく
手にした小石を投げると西瓜に命中した
西瓜は破裂し血みどろの果肉片から
光がほとばしりキリストに受肉した
水上に散らばっていた西瓜の果肉片は
凝集し道を造った
キリストはその道を歩いてゆく
果てしない奇跡を歩いてゆく


  • れたすたれす
  • 2014/07/29 (Tue) 19:16:46
まほうの西瓜
まほうの西瓜たべたいなあ
それたべたら
ずっと夏で
ずっとずっと夏休みで
蝉も死ななくて
プールは気持ちよくて
上がった後は昼寝して
宿題も後回しで
アイスクリームで
花火で
ラムネはうまく飲めなくて
みんなうずうずして
蚊に刺されて
暑くて
でもだからクーラーが涼しくて
扇風機もおもしろくて
とにかく
とにかくずっと夏なんだ

夏はぴかぴかしてて
太陽ってすげえ

まほうの西瓜たべたいなあ
でも
こたつでみかんもたべたいなあ




  • こはらあき
  • 2014/07/29 (Tue) 20:15:27
まほうの西瓜
「まほうの西瓜」


といいますと、ハロウィーンのかぼーちゃを思い出しますね。僕のおかーちゃんはよく、かぼちゃの中身をくり貫いて中に蝋燭を入れてくれたんですが、「今年は西瓜でやろうかしら。」って。

とか思ってたら、もう12月になってて、僕は年を取りすぎてた。もうそんなこと、進んでしようとする人なんて何処にもいなかった。ついでに僕はスイカアレルギーになっちゃって、、、食べるだけで、唇が腫れちまうんですよね。

だから、僕は、今年は、町の夏祭りに参加するの辞めて、電車で旅行しようってきめたんです。この方法なら、どこにでも一人で行けるもんね。

タッチANDゴーされた僕のSuicaの上に塩がまぶされ、一回り小さくなったまほうの西瓜は水滴となり、三番線のホームを赤く濡らした。僕は電車に乗り込んだ、

夏休みのなくなる年に、ここから出て行くことにした。窓の外の次々と過ぎ去って行く風景を、五年前、毎日眺めていたあの頃は、なんとも思っていなかった。緑を、日差しを、特急列車は全てを洗い流していった。

...とか、なんとか、スイカバーを食べながら、また昔のこと思い出してたら、僕の隣と前にある三つの関係が、静かに揺られながら、無垢な寝息を立てていた。僕は昨日切ったばかりの髪をかきあげながら、また窓の外を見て、光彩に映る、幾度も過ぎ去った暖かい光を、季節を、過ぎ去るように、また同じように焼き付けながら、スイカバーを食べた。西瓜はダメなのにスイカバーはいいのね、なんて、起き抜けにそんなこと言わなくたって、とか僕はいいながら、でも、これには魔法がかかってるからいいのさ、といいかえしてやった。/次、止まります。


  • あまさら
  • 2014/07/29 (Tue) 20:18:57
まほうの西瓜


ところで
わたし殺し屋なの
あなたの命を奪いにきた
いままで教えてあげたおまじないはぜんぶうそ
それどころか
唱えるごとにだめになる
視界がだんだん緑になる
だいじなことは忘れちゃう


空が黒く翳れば
鼻腔がうれしがるね
あなたにはわからないかもしれない
季節の匂いも時間の匂いも
夏は高い音階みたいな感じよ
ピアノでシを弾けばわかる
オクターブひとつ上


安心して
鈍器も刃物もつかわない
わたしの道具はもっと鋭利
だからあなたにはわからないかもしれない
もうほとんど目が見えなくなっていることや
心臓が止まっていることも


あなたの頬がまっ赤になって
食べたいとおもった
スプーンですくうなんてお行儀のいいことはしないで
かじりつきたいと
あなたが死ぬときは
花火よりもっときれい
満月より海よりうつくしい
愛よりもわたしよりもかわいいよ


ねえ
もう呪いは解けない
教えたとおりにいってみて
今ここで発音してわたしに殺されてください
  • なな・くますきー
  • 2014/07/29 (Tue) 21:38:31
まほうの西瓜
夏の夜の西瓜に蜜がたまってゆく音を聴きたくありませんか。サヴォーナで育まれた西瓜なら、あのけばけばしい縦じまの描線がなく、ささやかさを添えるように薄緑色に染められていますので、あるいは、西瓜収穫人たちの会話に訪れる無言の時間の深さにみちびかれ、果肉たちは幾度も夜の時間の中でみずからの糖度のなかに浸ろうと一夜、また一夜、ついに千もの夜か続くまで全身の蜜を入れ替えるため、聴けるかもしれません。この土地の童話のなかにでてくる乳母が、いずれもひとさじの西瓜のつぶしたつゆを、赤児にあたえるのは、えいえんに文字を読めなくするまじないのためです。西瓜が収穫されます。気がつけば、童話の登場人物はみんな畑に立っています。収穫人が蔓を切る。するとひとりひとりと処刑されてゆきます。
  • 浅井康浩
  • 2014/07/29 (Tue) 22:05:56
まほうの西瓜
あの頃は泥だらけになって
まほうみたいだって思っていた

冷たいなんて誰が決めたの
夏の暑さも
涙の味も
知って大きくなりました
密やかに愁い
叩かれて笑い
もう食べ頃だと思います

種もしかけもありません

それが真実なことに
違いはないのだけれど

(もう青くはないのです)

  • blueberry
  • 2014/07/29 (Tue) 22:08:10
まほうの西瓜(短歌)

おしえたくないけどきみだけにおしえてあげるうそでもおしえる


みたいものないけどみえてしまったみたいなことにみたされてゆくみたい


ひっかける気もないというとっかかりひっかかる気はありありなのに


直線でできたきみをぐにゃりするの水をわしづかみするみたいに


かぼちゃよりまほうのすいか馬車となりうまくまいますきみをうばいに




  • 阿ト理恵
  • 2014/07/29 (Tue) 22:16:50
まほうの西瓜(時間外)
そいつはたかあく蔓を延ばしている
どんな雲のきれはしもとらえてはなさぬ
そいつの根は沙漠じゅうにひろがっている
ひとつぶの水も逃しはしない

人間たちはひからびた河の痕をたどる時さえ
そいつにとらえられないよう警戒している
そして枯れたいちじくのようなそいつの葉をみつけると
人間たちの眼はらんらんと耀く

黄金の皮で護られた腐臭の果肉
髑髏の堆積を踏み越えて
いったい幾人がそこに達するのか?

沙漠に沈む夕日の大きさの果実
使者の堆積を踏み越えて
いったい幾人がそこに達したのか?





  • Giton
  • 2014/07/29 (Tue) 22:25:16
Re: まほうの西瓜(時間外)
羊皮紙みたいなくもりぞら
いなびかりをそっと育ててる
しずかに産んだへびの赤ちゃんみたいなひかりが
さらっとせなかに落ちてきたら
あとはしずむばかり
…みずこ

すいかばたけは
とてもおとなしい
いなびかりを模した
黒いたて縞は
なにをかきたかったの?
黒でぬりつぶした

すいかのなかにはね、
しずんだ赤ちゃんが
眠っているんだ

赤ちゃんっていなびかりの赤ちゃんもへびの赤ちゃんも羊の赤ちゃんもにんげんの赤ちゃんもだよ
ごろって寝がえりをうつ
ごろごろ、ごろごろ
鳴いてる空

ぐしゃぐしゃって紙を丸めた
まだ空にはなにも書かれていない
だだっぴろい余白が頭上を圧して
わたしはすいかといっしょに潰れた
  • うき
  • 2014/07/30 (Wed) 11:14:39
Re: まほうの西瓜
ほら
ベガサスの翼だよ

たたき割られた赤を
きみは
抱いて。
  • 草野大悟
  • 2014/07/31 (Thu) 21:07:47

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