ぽつ ぽつと 草をたたいている 過飽和の空
かかえきれないほどの熱を帯びてしまった蒼鉛の叢(むら)
‥‥臭い‥
‥‥焦げる‥
‥‥あのビルの向こう側で みえない業火がこの街を灼いている‥
きみは疑いにとらえられ ぼくは説明する
それはどちらも即興でこさえたセンテンスの交換だが
心の波濤は かつ結び かつほぐれ ざわめきあう
かさ‥ かささぎ 場違いな黒い文字列が丘のうえをよぎる
まだらなアスファルト 塗りつぶされ しっとりと黒く
‥‥磯の匂いだ
‥‥魚と藻くずの腐臭
‥‥性交の余醺
きっとどぶが溢れだした
ぼくはなにもしていないのに
どうしてこの街をこんなにくるしめるだろう
どうにもならないこの心のせいなのか
‥‥匂いがしなくなった
雨脚いよいよしげく立ち びろうどの簾が落ちる
あとからあとから飛び去ってゆく オレンジの端切れ
はしる はしる 青糸くず
いきなり眼にはいる きみのぬれた肩
白い世界で抱き合う水(みな)底の交尾
きみのためならしねるとちかったのだから
‥‥蒼くすきとおった海鼠のにおい
‥‥雨上がりの菫外線がオゾンを生産している
すっかり乾いた きみのせなか さまざまの香り
草の吐息 干しくさの汗 みずいろの雫
打っているのは だれの鼓動なのか‥
- Giton
- 2014/08/17 (Sun) 00:05:43