ぼくらが旅にでない理由
遠くまで旅する友達に

  • 紅茶くん
  • 2014/08/21 (Thu) 23:51:29
ぼくらが旅にでない理由
理由?

理由なんてねえさ、

ひとつ聞くが
庭を歩くことを
旅って言うのかい?
  • ちゃむ
  • URL
  • 2014/08/22 (Fri) 00:23:53
ぼくらが旅にでない理由
旅をしないでどうやって蛮族を征服できるのだ?
旅にでないでどうして任地に赴任するのか?
旅をしなかったら聖なる経典の数々は手に入らぬ
追放されたのだから旅に出なければ生命は無い‥
 ‥きみたちは言う

そして旅をするきみたちはみな自分には理由があると言い
旅をするのは必然性の帰結だ天の摂理だと主張する
誇り高く主張しそして旅立つ 独りであろうと
多くの従者を従え長々しい行列を引いてであろうと

そしてきみは旅をする
旅すがら要衝においては詩文を草し
それこそがきみの旅の証しであり
いなきみの旅そのものであり
その詩文ゆえにきみの旅は永遠に記憶され
旅した人としてのきみもまた後世に輝く

人生は旅なのだ
きみにとって旅は人生そのもの
旅なくしてきみは生きていたことにならない
それが解っているから旅はきみの苦にならない

苦にならないがきみたちはしかつめらしく表情を苦難に歪め
艱難千里 道猶延延 などと言う
ちょうどぼくらが人間として生きることなどちっとも苦ではないのに
ことさらに苦しそうな表情をして見せるのと同じことだ

きみたちは去ってゆく 旅をするとは去ることなのだ
父母妻子を置いて去ってゆく 親しい友を置いて去ってゆく
去りゆく者はうつくしい 去りゆく者は透きとおって純粋だ
客舎青青柳色新(あら)た 一片の氷心玉壺に在り
そうだったのだ きみは美しく記憶されるために旅に出たのだ

きみは河(か)を溯行する きみは峨峨(がが)を股にかけ きみは江(こう)を流れよりも疾(と)く奔る
きみたちはこの世界を見渡す 千里之目(もく)を窮めんと欲して きみたちは旅に出る
きみは皇帝そのひとを超えんと願うのだ きみは旅に出てこの世を征服するのだ
そしていつかきみは還って来るのだろうか? 何(いず)れの日か是れ帰年(きねん)?‥

ぼくらが旅をしないのは理由がないからではない
皇帝の命令が下ってこないからでもない
ぼくらは待ちつづけているのだ
待ちつづけて朽ち果て いつか忘れ去られようとも
  • Giton
  • 2014/08/22 (Fri) 02:29:01
ぼくらが旅にでない理由
旅は長寿の妙薬である
故人はそんなことを言っているが
ご当人は暢気に旅ができたご身分ではと
士農工商の身分制度に縛られた僕たちは
行けるといったら、生涯一度のお伊勢参り
10年に一度の富士講(男子の場合)ぐらいで
それものんびりとは参りません
チビチビとお金をためてやっと行けるようになっても
人選を凝らし幹事役を決めたりなかなか厄介です
それでもお金持ちはこっそり湯治に出かけたりして・・
夢は枯れ野を駆け巡ると詠んだお人も
幕府隠密だったりして・・
商人でもないのにお供を連れて名所巡りしたりして・・

パスポートを持たない僕たちが夢に描くは仙人
長寿の妙薬を懐に、風の向くまま気の向くままに
あちこちを彷徨って、面白可笑しく放談をばら撒いて
あっと言う間にテレビ画面をジグザグに横切って姿を隠し
僕たちの知らない国をのんびりと旅してる
  • 大森貝塚
  • 2014/08/22 (Fri) 07:57:18
ぼくらが旅にでない理由
コップ一杯の麦茶に昨日見た夢を溶かして
ぐいとひといきに飲み干す
季節は夏、あくまで夏だった

例えるなら、ここは砂漠
らくだの背中にまたがってゆらり、と
背中のリュックに刺さる白旗 
ぼくらはいつだって負けている
嗚呼、月がとてもきれいだ

ぬるい空気にまぶたが持ち上がる
寝汗を吸い込んだシャツを洗濯機に放り投げ
気だるげなコップに麦茶を注ぐ
ふ、と外に目をやれば洗いざらしのタオルが
白旗みたいに揺れていた

だからぼくらは旅に出ない、きっと
  • ほしこ
  • 2014/08/22 (Fri) 14:47:12
ぼくらが旅にでない理由
わざわざ旅になんかでないさ
日常を少しずれると
そこではもうぼくらは旅人

嘘をついた昨日の山
今日は波みたいな雲を被って
海になんか行ったことないけど
この山が全部教えてくれる

いつも違ういつもが
ぼくらを旅人にさせる
居場所を変えたって
苦痛の種はいなくならないのさ

種は蒔くもんだ
蒔いて育てて
花咲かせて実を食べて
最後は根っこを引っこ抜いてやる

根っこは意外なところまで這っている
それを辿るのも
ぼくらを旅人にさせる

わざわざ旅になんかでないさ
いつかの海を旅立った雲の下
ぼくらの種は根を張るんだ

  • こはらあき
  • 2014/08/22 (Fri) 14:51:07
ぼくらが旅にでない理由
籐椅子にトランクスで座る男を
眺め続けて居た
台所から洗い物を終えて戻って来ると
男は腕をぶんぶんさせて
空の雷はごろごろして居て
ラジオの受信障害は雷音が始まるちょっと前から始まって居て
受信障害は時折しゅっしゅっとシュー音が出る程度で
止まって仕舞う程では無い
先程の男は「僕どうしたらいいんですか」と
テレビの文句を繰り返していたが
遠雷やひとり昼餉の青菜汁 石橋秀野 「桜濃く」
迅雷やおそろしきまで草静か 原石鼎 「花影」
と突如独り言を呟いた時は少し驚いた
はたゝ神七浦かけて響(とよ)みけり 日野草城 「花氷」
「ぼくらが旅に出ない理由はお前が「はたた神」が雷だと言う事すら知らないのを恥ずかしいと思うからだ」
と言われた時も少し驚いたのだった。
  • ぎわら
  • 2014/08/22 (Fri) 15:45:50
ぼくらが旅にでない理由(短歌)


かわいい子にはたびをはかせろつまりとりつくしまへとりつかれてる


とりつくろうためにふくろにおしこむそのよこしまよ、ぼくらがすくう


できることだけして花でいることに
いけないわけなんか わけなんか


「にげちゃだめ」まもなくふってきます。てのひらをひろげておまちください


ぼくらがここにいることのわけとかはみんなちがってみんなかっこいい


  • 阿ト理恵
  • 2014/08/22 (Fri) 21:42:54
ぼくらが旅にでない理由
心がわらないのは何かのせいでもないことを知っているし
実はけっこう乗り気だった
スーカーイーツリーかーらー、つーづーいーてくーみーちーとか歌いながら
君は完全に酔ってげーげーしていた
ある日のドライブ
そもそも車で成田に向かうという発想がない
それが旅にでない理由のひとつ

ナリタマデと聞くと
ツジコノリコの風景そのものが眼前に流れ去っていくわけで
「外は戦場だよ」と小山田の曲のフレーズが
そこに静かにかさなってくる
ほら、外は戦場のようにとても静かだ
死せる人々のゴーストのささやきのゆらめくを車窓に横目に
ぼくらもどこかでひとしれず客死したいというほのかな願望を
ひっそりともっているのか
今ではもうよくわからなくなっている

左へカーブを曲がりつづけていたら
いつのまにかもとの場所にもどっていたことがある
そういうときにトランペットのうまいサングラスのおっさんが
隣席にいたら楽しいだろうと話し
秋の渚で南風を待っている君のうしろすがた
それでもやっぱり出立には先立つものが必要なわけで
それも旅にでない理由のひとつ
  • みずけー
  • URL
  • 2014/08/22 (Fri) 22:26:31
ぼくらが旅にでない理由
向かいの席でよく日に焼けた女がもたれて居眠りしてる大きなスーツケースの上にアイラブ沖縄と書かれた真っ赤な袋が南国のバカンスひと夏のロマンスなんて言葉連想させて涎が出るほど羨ましいけど面やましいけどぼくらは旅立たない
あいつが発ってからどのくらい経ったろうか遠いとこへ行くんだと宣言して立った廊下踏みしめて二段踏み外して転げて笑ったように締まりのない口元思い出し笑いつられちゃったよ情けないし泣けない
だからぼくらが旅にでない理由を聞くなんて野暮なんだ日暮なんだか年の暮れなんだかわからないけどいつまでも待ってるしそんなのあいつが帰ってくるのみんなで迎えるために決まってるじゃないかって言えるほどウブじゃないんだわかってよ
  • こうだたけみ
  • 2014/08/22 (Fri) 22:36:17
ぼくらが旅にでない理由
天気予報によると午後から曇り、ところにより雨、らしい。傘を持っていくか一瞬迷ったのち、会社の置き傘を頼ることに決めた。階段をおりて、自転車に乗って、駅まで。いつもの道をペダルを漕いで進み、通学の児童は集団であふれた。国道を東へ、車は急いで、あぶないから前を向いて。みどりのおばさんは大きな声をあいさつに変えて、黄色い手旗をひらめかす。青を赤へ、赤を青へと、循環していく街の景色だ。隙間なく軒たつ家々が視界を流れ、家族だな、と分かる。路地を入った更地にも新しく基礎ができてきて、進捗を見守る作業員数名、つなぎに汗をたくわえながら、ほどよい固さにコンクリを溶かした。路側帯を通って歩く人。道なりに、商店は開店の準備を始める。干上がった舗装路に打ち水をまいて、街路樹、野立て看板、プランター、引っ越しのトラック。台車が荷物を運び、ぐずぐずしている人を見てはいらいらしている。それでも順番は守った。駐輪場に停めて改札を抜けると、案の定人であふれているが、その中の一人として振る舞いながら遅れて来た電車にとびのる。
  • メチターチェリ
  • 2014/08/22 (Fri) 23:05:12
ぼくらが旅にでない理由
「そんな昔でもないんだが、俺には昔の話をしようと思う。」こういう始まりをもって、男は私に色々な話をしてくれた。色々っていうのは細かく説明しようとすると恐ろしくてしょうがなくなるくらい色々で、だから私は話の内容なんて忘れてしまって、ただ男が男だということと、歩きながらお話を考えていること、年に一回私に話をするためだけにこの町に帰ってきていること、それだけを、覚えること、にしていた。

ある日、この町の掲示板に「『僕らが旅に出ない理由』というお題で何か書きなさい」という宿題が出され、町人達は皆、頭を悩ませた。ある人は図書館でそれらしい言葉を改変してそれらしく一つの作品に仕上げて王様の元へ献上したそうだが、なんと翌日の朝、首をはねられたらしく、そのせいで町人達はものすごく慌てた。その時、私に一人の少年がやってきて、花束をくれたんだけれども、私は首を傾げるほか、どうすることも出来なかった。少年は帽子を深くかぶり直してその場を走り去った。

提出期限は今日の24時までだった。だから、昨日一日がかりでこんなものを書いた。



ぼくが旅にでないのは退屈することがないからだ。ほらそこら中でいろんなものが眠っている。ぼくはそれらを叩き起こしては朝ですよ、といって近くのコンビニへいって新しい漫画を発掘したり、2ちゃんで釣りをしたり、ゲームで女の子と色々ぶっころしたり、誰かと恋しちゃう映画をみたりしている間に夜になる。あれ、なんか接続がおかしいなぁと、望遠鏡で家に中に張り巡らされた天井裏を見れば、多分そこにはきっとなんかいるんでしょうね。ぼくにはわからないや。

僕が旅に出ないのは色々と忙しいからだ。僕にはやることがたくさんある。そしてそれらはとても近いところにある。遠くの物ばかり見たってしょうがないじゃないか。ほら、ここにも、あそこにも、色々な顔をした草花が固いアスファルトの殻を破って命を咲かせているよ、
少なくとも僕よりはね。わらっちまうだろ。僕ら、クーラーねぇとしんじゃうんだぜ?

ぼくが旅にでないのは、いえがとてもすきだからだ。いえには、快適に過ごす為の、必要なものが、全て揃っている。まずはパソコン。テレビ。ゲーム。カップラーメン。焼きそば。ブタメン。冷蔵庫。電子レンジ。椅子。クッション。猫。コタツ。ティッシュ。それからトイレ。色んなものがあるね。ああ、最後にヘッドホンも欠かせない。そしたら音楽も必要だし、そうだコンセントも、漫画もある。本だって、光もある。火だって。料理も出来る。色々ある。だから楽しい。それ以外になにかあるんだろうか。友達にもすぐあえるしさ。先生はこれをからっぽな生活だとかいうけれど、どこがそうなんだろうか。ぼく達の日常は生活によって祝福されている。

僕が旅にでないのは、僕がどれだけ恵まれているかよく分かっていないからだと思う。僕はいつも駅前のアーケードを通り抜けなきゃならねぇんだけど、それがくるしくてさぁ、だって毎日あんなにゴミがでんだぜぇ、雨の日も風の日も、うずたかく積まれる段ボールと燃えるゴミの袋の数は変わらねぇ、ハンバーガーがすげぇまずいのに、僕は百円で皆買っちまうんだよなぁ。でも僕はまだ、働いてないからそんなことおもうのかなぁ。はたらいたら、そんこと考えるのって、クソみたいなことになるのかなぁ、だってこんなこと考えてたってどうにかなるわけじゃないし、他にもっとやることあるんだろうって、なんか思うから。だから僕はまだ旅に出る訳にはいかないようなきがする。

ぼくが旅にでない理由は。雨と気まぐれのせいだ。理由なんてどうでもいいんだ。ぼくはかっこつけたいたらいろいろごちゃごちゃいってきたけど、単純に天気が悪ければ外にでたくない。雪が降れば寒いといって部屋にいればいい。



ここで筆が止まった。何かが違うような気がした。私の住む王国の国民達は、この国から殆ど一歩も出たことがなかった。その間にも多くの人が殺されていった。

ドアを叩く音がしたので「どなた?」と私はいった。ドアは「わたしだ」といった。「どなた」もう一度いうとドアは開いた。「私だ」この国の人達の半分が一日で旅人が嫌いになり、この国の人達の半分が旅人になった。私はその内の後者で、花束を渡してくれた少年だった。私はヘッドホンを外して音楽を止めた。「一緒に逃げよう」「どうして?」「どうしてじゃない、君の命があぶないんだ、いまならまにあう」「どうして?」「さぁ、急いで、早くしないと憲兵隊が見回りにきてしまう、さぁ、早く」「どうして、あなたは旅人になったの?」

私はついになにも書くことができなかった。夢の中でなら、何かかけるかしら、と一時間だけ眠ってみたけど、なにも思い浮かべることができなかった。私は私の本棚をひっくり返して、今まで読んできた本ぱらぱらとめくってみた。そこには、旅にでた人達が様々な出会いをしながら、現実に打ちのめされて、冷たくなっていく過程が描かれていた。不意に男の顔と言葉を思い出した。

朝きて、いつも通り顔を洗って、歯を磨いた。朝ごはんはいらなかった。

化粧の過程は男にはどう形容していいかわからないくらい複雑で、だから男は「なぜそこまでして顔を隠すのか」といった。男は「私の顔を見ながらすればいい」といった。「私がどこまで化粧したら丁度いいくらいかわいくなるか教えてあげるから。」男は、人も気持ちがわからない男だった。けれど私も、男が何を考えているのか、わからなかった。男はそれからまもなくして、崖から落ちて死んだ。

私が話をする番になって、私は架空の旅の話を小さな子供達の前で代わりにすることになった。でも私はうまく話すことはできても、聞かれたらなにも答えられなかった。私は些細な質問が一番嫌いだった。私がしっていることなんてそんなないの、なんていえるわけがなかった。

兵隊がドアのノックを叩き、私はそれに応じ、兵隊は私を車に乗せて、私は黙って窓を外を見て、旅に出ない人間になった。途中まで書いた話を完成させれば、私は首をはねられずに済んだのだろうか。そうしたら、こんなに長く言葉をめぐらさなくても、理由が生まれたのだろうか。私は少年についていって。物語の続きを考えるべきだったのだろうか。もしそうなら、どうだったのだというのだろうか。

今になって眠くなってきた、私の意識は車のエンジン音に包まれながら、でもやっぱり、私は、私は、もうちょっと前にこの宿題がでてればよかったな、っておもうよ。
  • あまさら
  • 2014/08/22 (Fri) 23:50:03
ミスです
すいません場所まちがえました
  • あまさら
  • 2014/08/23 (Sat) 13:07:04

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