その日、風鈴の割れる音をきいた
夏休みはもう終わり、ですね。

  • ほしこ
  • 2014/08/25 (Mon) 16:14:48
その日、風鈴の割れる音をきいた
ふかぬ日の風鈴は蜂のやどりかな 言水 「京日記」
ある日蜂は風鈴を破壊する
蜂の力は天然太古の力で容赦鳴く風鈴を破壊する
夏の終わりに
夏の風物詩が破壊されて行く

風鈴や花にはつらき風ながら 蕪村 「遺草」
青嵐だろうか、あれは本来雨を伴わない
青葉の頃林や野を吹きわたる強い風
花につらいだけでは無くて風鈴をも破壊して行く
私は風鈴の割れる音を聞いた

風鈴や草匂ふほど水きけり 富田木歩 「定本木歩句集」
草が匂って来る
水の音を聞いて居ると
草の匂いが余計に匂いやかに
迫って来る
その匂いが風鈴を破壊する程に
私は風鈴の割れる音をきいた
夏休みの終わりに
その日私は少年二人を踏切で目撃した
小学生の頃を思い出した
家二件の増設と共に
  • ぎわら
  • 2014/08/25 (Mon) 17:43:10
その日、風鈴の割れる音をきいた
もうそんなことは言わないでいい
オレンジ色の毛布が植木に落ちていた、とか
穴の中で飯を喰った、とか
虹のこと、とか

もう、ルークの前をいきなり上げるほど
むこうみずでなくなってしまった
浮き輪につかまり
ぼくの心の風景には鳥影も射さない
青空だ

そうやって祝祭を待って、冬を越すのは
夏のために生きるようで・・・

川のはじまりが、どうなっているか知ったその日、

  • 紅茶くん
  • 2014/08/25 (Mon) 20:53:44
その日、風鈴の割れる音をきいた(短歌)



なつとあきすきませますぎすきがなくだらけた暮らしすきをほしがる


さらさらときれいに流れない指がひっかかってひっかきもがくざらざら


タトタトと外ハネまわる半角で兼ねてより嫌いある女が


その日、風鈴の割れる音をきいた。あしもとにしがしのびよる


ほこり、すをのみ、夕とどろき、うらら、なきこけるあたま眠るしかない


  • 阿ト理恵
  • 2014/08/25 (Mon) 21:25:36
その日、風鈴の割れる音をきいた
夏は電力の季節たけなわ
炭酸ガスの嵐が吹いた その日

物干し竿に吊り下げた風鈴に
蝙蝠がしがみついて
こっちを見ている つぶらな瞳
窓越しに眺めている…暑そう

あたしの部屋は
エアコンが効いていて 快適
ヴェランダは
日が暮れても 町の熱で不快だろう
みんな発熱して
それを外に放り出しているからね

あたしも 快適な部屋で
ちょっと汗をかいたりする
薄暗い きみの背中を指でなぞって
押し殺したファンの回転音の向こうに
蒸し暑い外の大気を越えて
軽やかな ガラスの割れる音

それは
下着泥棒でもなんでもなく
怒った蝙蝠が 風鈴の紐を噛み切って
どろんと硬い コンクリートの床に
叩きつけた 音
  • Arwen_Eriko
  • 2014/08/25 (Mon) 22:29:33
その日、風鈴の割れる音をきいた(0:06改稿)
風がやむのを待っていた
(無言の幽霊が
(さびしく背骨をとおり過ぎた
目玉をこわばらせた虫たちが
つぎつぎ枝から落ちていって
老いた蟻地獄の砂、
ひとつぶ、縁側にはじかれ光った
(外国のたばこは疾うにシけ
(ときおり、海のにおいがする。
声が鼻腔でゆっくりまがり
暮れの音鋸《おとのこ》みたくウンと鳴っても
くろい土に落ちた
俺の指はつめたくって

  死骸を運ぶ仕事なら
  このサンキューも運んでくれな
蜜柑の若木のそばに
ぽっかりあいたタイムマシンの穴
に、投げやりになって突っ込んだサヨナラが
まだ帰ってこないから
俺は引き出しや押し入れを開けては
なにを探してるか、わからなくなって、
 わからなくって、、
ひとり敷居で
あしを突っかいて爪剥いで
そのとき一瞬ふすまの奥で
置いてきたものが光る
蟻の背な、
定刻表、
きっともう
帰らないでも

数えなきゃ覚えてもいられない
憎んだ数、
許した数、
また憎んだ数。
        (プルタブ、
        (電熱線、
        (烏の羽。
終わらない橙の空想へ
二本の箸で出来合いの橋をかけ
ちいさくなって夢をわたるさ
 (あそこの雲は
 (昨日たべた魚の墓か、
夕暮れ溜め込んだ風鈴が
とうとう切ない声で泣いたよ。
心臓にキンとひびの入るような、
泣いたよいちどだけ、ああ。


  • 洗剤イヤ子
  • 2014/08/25 (Mon) 22:38:47
その日、風鈴の割れる音をきいた
あまりにも刺さるのでそれを取り外す
風が強いのはいつものことで、それはとても痛いのです
こめかみあたりから、あるいは首の後ろから
小人が僕の邪魔をして視界という視界に落書きをした
そちらはだいじょうぶですか
と、言いそびれてしまったと今更気づいた
詩を読まないといけません
その日、風鈴の割れる音をきいた
目を閉じないといけません
ゆっくりと数をかぞえて空に放った。
  • クローバー
  • 2014/08/26 (Tue) 00:18:29
その日、風鈴の割れる音をきいた
浅草寺ほおずき市の七月
鉢植えの中で膨れる橙と
頭上につらなるガラス玉
風が吹くと一斉に揺れる
景色すべてが鳴っている
母にねだって風鈴ひとつ

更埴市稲荷山お花市の八月
妹と揃いの服を着せられて
どんしゃん音頭聴きにゆく
露店のビーズが欲しいけど
まどべの風鈴おもって我慢
どんどんしゃんしゃんどん

秋雨前線と秋台風の九月
つよい風雨にあおられて
アサガオ開き金魚が舞い
花火が咲きトンボが泳ぐ
ガラスの中はにぎやかで
触れてみたいと思ったの
けれどそれは私の手の中
ぱり、と小さく音たてた
  • こうだたけみ
  • 2014/08/26 (Tue) 00:35:46
その日、風鈴の割れる音をきいた
そう、あれは風のない穏やかな日だった
それなのに
その日、風鈴の割れる音をきいた

この前は、花瓶の割れる音が
その前は、壁をたたく音が
     ドアを殴る音が
     何か怒鳴る声が 
     すすり泣く声が
     寂しい独り言が
     
     何もききたくな思いが・・・

すべてを誰かのせいにして
すべてを自分のせいにして

そうやって世界を作っていった
裸の王様

そう、あれは風のない穏やかな日だった
それなのに
その日、風鈴の割れる音をきいた

それは窓を開けたから
世界に少しひびが入ったから

落ちそうだったものに手を伸ばして
逆に落としてしまった

無意識に守りたかったもの

守れなかったけど
嬉しいような切ないような

声を殺して涙

涙が乾くのを待ってから

新しい風鈴をとりあえず買いに行こうと思う
  • ちゃむ
  • URL
  • 2014/08/26 (Tue) 00:54:15
その日、風鈴の割れる音をきいた


――――---もう、付き合いきれんわ






――――---その日、風鈴の割れる音をきいた






  • あまさら
  • 2014/08/26 (Tue) 01:26:35
その日、風鈴の割れる音をきいた
ニイタカヤマノボレの暗号に
我勝ちに風鈴を粉々に砕いた
冬の最中にわざわざ探し出して割ることもないのにと思っていたら
なにごとも徹頭徹尾完済しないでは置かない目に居竦まれ
風鈴を所持するのは軟弱な非戦主義者だ、非国民だと罵られ
向こう三軒両隣の恥とされ、下手すると村八分にもなりかねない
それ以来、我が家にガラス製の風鈴が来ることはなかったが
ある夏の日、青銅製の薄い風鈴が北の軒下に下げられ
可憐な澄んだ音を立てていたのを記憶する
煩がる隣人に遠慮したのかすぐに撤去された軒忍もない軒下には
暑い乾いた風が屯してざらざらした砂埃も堆積し目を向ける人もなく
居場所のない粗末な風鈴がどこに往ったか今では探す術も無く
耳の奥に微かに残るチンリンカラコロたおやかな音色だけが
彼の儚い存在証明となっている
短い夏の思い出に軒忍に下げられたくっきりとした絵柄の風鈴
爽やかにたおやかにはしゃぐ姿も記憶の底にだけ踊っている
風鈴が割れるのは犯罪者の仕業ですと刷り込まれたこぞの冬
  • aoba_3k
  • URL
  • 2014/08/26 (Tue) 10:00:53

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