即興ゴルコンダ（仮）

急に秋めいて参りましたので・・。

偉いひとにはそれがわからなかった。全天周囲型のコクピットでなければ意味なんかなかった。ザクとは違ってほしかった。さらにいうならどっちかっていうと連邦のほうが好きだった。もちろん、ジオン公国もネオ・ジオンも、キリシアに届ける壺だっていいものだ。しかし僕も坊やだったからかもしれない。足なんていらない。全天周囲モニターが必要である。と言ったら。そんな気位でこれから生き残っていけますか。軟弱者！と面罵されたあげく平手打ちをくらった。親にも殴られたことないのに。でも悲しいけど、これって戦争なのよね。このアッガイでいいです。はい。出撃します。弾幕薄いよそこ。はい。出撃します。ジーク・ジオン。ジーク・ジオン。ジーク・ジオン・・・・・・。

ガンダムと言うモビルスーツを
操作しながらアムロは句会をするのが好きだった
まだ試着中でモビルスーツの運転技術はアマチュアだったが
句会では名誉10段と免許皆伝を与えられて居た
書肆の灯にそぞろ読む書も秋めけり　 杉田久女
初あらしいやおどろくは与謝の景　 重頼
駕籠に居て挑灯持つや初あらし　 太祇
温泉湧く谷の底より初嵐　 夏目漱石
アムロが名句を諳んずると
彼がモビルスーツを試着中などとはあまり
分からない程だった

秋のニューモデルを陳列中
流行色系統を中央に添えて
水玉模様も少しだけ
今年の流行はスリムでしなやか
最高速度より燃費と飛び心地
安全性はもとより保証つき
お買い得価格に設定してあります
須磨穂でご注文の方には
ポイント倍増サービスも
どんな服でも着せてしまえば
こちらのものと主任は恵比須顔
こんなものですよ
それが当たり前なのです
違和感は最初の１０秒だけで
すぐに手離せなくなりますよ
殺し文句を反芻しながらの再就職
なにしろ
近頃は故障することはなくなったので
保守点検部門は閉鎖される一方で
こちとら職人気質の仕事は
破壊テストに立ち会うくらいなもので
最速がマッハ０．８までに規制されてからは
ゼザインとカラーコーディネイトに軽さ
それに尽きるといっても良さそうです
価格を決めるのはブランド名だけですから
売るのも案外気が楽ですよ
試着中は黙って見守るのが当店の決まりです♪

ひとめ　あなたに会いたいです。明日　とうとう起動します。
あなたは　いかがお過ごしでしょうか。
私は、ようやく　明日　起動します。
わたしは　アルバムを見ながら　学生時代に書いた日記を読み返してました。
あの頃に書いた物には　得体のしれないエネルギーが満ち溢れています。

覚えていますか？貴方は私のことを「ノーマル」な人だと言いましたね。
わたしは　尖がった声で　「私のどこか　ノーマルなの！」と吠えましたね。
わたしが明日起動させる機は　ノーマルタイプです。

メジャーなタイプは　　頑丈な装甲といったアドバンテ-ジがありますよね
わたしのはノーマルタイプ。まさかの　塩化ビニール製です。ごく普通に　戦います。　
けれど　虚心坦懐であろうと　思います。

モビルスーツを着るからには
夢中になってとりかかねば　と　おもい古い日記をとりだしました。
いまでも　あなたのことが好きです。
あのころと　かわらず　まっすぐに　行ってきます！

あの写真さあ
俺の分も
プリントアウトして貰って来てよお

えっ
だっておめえ写ってねえじゃん

だってさあ
ああゆう時って
中尉の隣りの席とか
椅子取りゲームんなっちゃうじゃん
そうゆうのって俺どうせさあ

だなあ
俺だってそうさあ
ガンタンクの練習なんかしてっけどさあ
どうせさあ

トランプをシャッフル
もう一つ作成する
ＣＴスキャンして
設計図を書き起こす
ここに写るのは腫瘍
移るの？
エラーを削除
もう一つ、削除
正常な部分を付け足す
スペードの僕を試着する
健康なモビル(模型)
別のスーツになれた
翼もないのに身体が軽いなんて
けれど
この問題のない身体は。

モビルスーツって何？
って聞いたらあなた驚愕の表情で
それから蔑むよな憐れむよな目をして私、
ほんとうに傷ついたんだから
この車両に乗ってる人たちの
どれぐらいがあなたと同じ顔するだろね
想像したら私、叫びだしたくなった

長い座席は七人掛けです
の七人が揃って同じ顔
一斉に操縦桿を掴む
車両が右に傾いでく
前方確認　後方注意
右見て左見て再度右
緊急停止する場合には
近くの吊革におつかまり

そこねて窓から弾きだされた私が
赤い機体にさらわれてあなた
嬉しそうに歓声上げるとこ見ると
もはや敵か味方かもわからないし

だったら次の休みはお台場に行こうよ
ってうまいこと丸め込んだらさ
来週の日曜の今頃は二人
モビルスーツを試着中

球体の透きとおった水晶ごしに見える
世界はたぶん
私、と、あなた、ではすこし違っているのかもしれない
ひとりひとりに微妙に異なる視界
すいたい、というものが色彩を
かんたい、というものが明暗を見るのならば
幽霊を見る、ゆうたい、という細胞が
私たちの眼球というものに
あるいはその周辺にそなわっていてもいい
ARを見るための網膜に埋めこむチップも
存在しないものを見るという点では似たようなものだろう？
そう言って彼は笑った

私たちの体を透かせば
それはそれは葉脈のような血の網がどこまでも
細部にいたるまで張りめぐらされ
赤い川があれやこれやをどこやそこやにせっせやせっせと届け
T細胞なみの働きをする血管内のナノマシンはさしずめ
地図に描かれた葉脈の河川をはしる船舶
夜のISSからのぞきみる光の川、光の血、光の網
この星はひかりの葉脈をもつ一本の球体の樹
ネットワークにつながればつながるほど
光芒を放つディスプレイのくびき
それがためにヒトとしての動作は緩慢に緩慢に
私たちは赤い植物になっていくのだろうか？

支払いは現金で、が
支払いはカードで、になり
支払いは電子マネーで、もまあまあ普及
支払いは手ぶらで、あたりは皮下のデバイスがやったりしている
手ブラ決済
ぶら違いだね、そう言って笑いあう

モビルスーツはダンボールでつくれるというけど
着るのは目立つ外側
それならモバイルスーツは目立たない内側に着込んだっていいじゃないか
モバイルが「似合って」いる私たちって
どんな姿なのだろうね
人なのか
サイボーグなのか
植物なのか
そうしゃべりながら暑い部屋を開け放って
汗をかいた水さし、グラス、ユニコーン鑑賞会
リディさんの奪っちまうぞ発言に目が点になり
そういえば汗って血液からつくられるんだっけ？
ソファに根をおろし
私たちはひたすら植物になっていく