秋模様を切り取って
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  • かんな
  • 2014/09/29 (Mon) 20:30:15
秋模様を切り取って
秋模様を切り取って私に教えてください
こちらの乾いた北風は花々の死神になって
再生だって司っているのです
私の庭はちょっとした雑草の高層ビル
白い蝶が飛んだと思えば
おおきなネズミを食んだ黒猫
かんかんといつも南から音が聞こえ
もしそれすらも止まれば
地平をすべる銀列車のわきで
深い夜を巣にする野生鳥
それもひときわ下劣なやつが
いつまでも月と談笑しております
そしてふと気がつくと
あなたはいろんなことを思い出しております
渡る風をみつめて
季節の終わりには宛のない手紙をだしたくなるといいます
なにせ手紙はいつも書き終わりはしないですから
いっそすべて捨てられてしまっているかもしれません
言葉じゃやさしさしか伝わらないから
そしてそれじゃだめなんだといいます
  • 紅茶くん
  • 2014/09/29 (Mon) 20:49:13
秋模様を切り取って

秋だよ
当然秋だ

春のアントが秋だなんて
君も案外
単純なことゆうねえ
そんな抒情に流されてちゃあ
現代詩人さんたちが怒るぜ
でも秋ってのは悪くない
春に秋って
悪くない
茶色くって
カサカサしてて
その癖果実はグジュグジュしてて
イチョウの木なんか
思い浮かべてごらんよ
なんかの匂いに似ていないかい
どっかの匂いに似ていないかい

コメ
コメだ

今度はちょびっと
捻って来たねえ
でも予想通りのスクリューボールだ
勿論俺も
受けて起つよ
コメでいいんだそれで上等
ひとにはコメに見えてるとこが
本人にとっちゃ
案外トラさ
ひとにはコメに見えてるとこを
真剣に遊ぶ
嗅ぐ
舐める
指入れる
舌入れる
鼻入れる
放送禁止用語入れる
血が出るぐらい甘噛みしちゃう
フレッシュチーズじゃ物足りない
青かびだ
白かびだ
例の蛆が湧いてる奴だ
カース・マルツゥ
カース・マルツゥ
ウフォッ
  • 安藤紅一
  • 2014/09/30 (Tue) 00:38:35
秋模様を切り取って
団栗がまだ茶色になって居ないのが
原典と違うと思いながら石畳を
歩く
萩が咲き誇って居るのを見る
それからコスモスを見る
津島神社の巨大な
イチョウを見て
帰って来た
  • ぎわら
  • 2014/09/30 (Tue) 02:23:27
秋模様を切り取って
そのキリトリ線は曖昧だから
うまく切り抜けたためしがない
だけど秋生まれはいつだって
短い季節に恋い焦がれてる

なんて半分は嘘
秋模様を切り取ろうとしたことは
後にも先にも一度しかないから

鱗雲ひろがる高いたかい空に
夕焼け小焼けのオレンジが滲んでく
ちょっと目を離した隙に紫さして
あっという間に濃紺へ沈んでく

息を
止めていたことに気がついて
空気の塊を吐き出した
水中でもないのに息継ぎできないのは
輪郭が、曖昧だからでしょうか

あと少し気温が低くなって
凛とした朝がやってくるその日
もう一度だけキリトリ線さがすから
次はもっとうまく切り抜けられると言って
僕の空席は君が埋めて
  • こうだたけみ
  • 2014/09/30 (Tue) 09:17:53
秋模様を切り取って
誰かが歩く音がして振り向くと
枯れ葉が寂しく泣いていた
今日は風がくるくるとよく回る
目眩がするほどによく回る

なぜ枯れ葉は泣いていたのだろう
なぜ人は泣いているのだろう

深呼吸すると
雲がひとつ消えた
今日は風がくるくるとよく回る
目眩がするほどによく回る

なぜ汗をかくと冷えるのだろう
なぜ涙を流すと温まるのだろう

石ころを蹴飛ばすと
枯れ葉を追いかけてった
今日は風がくるくるとよく回る
目眩がするほどによく回る

秋模様を切り取って
懐に入れた散歩道




  • こはらあき
  • 2014/09/30 (Tue) 18:00:08
秋模様を切り取って
秋球儀というものがある。地球儀や月球儀のような、それだ。ただ、卓上に置けるサイズのものもあれば、幼児が両手を広げても抱えきれないものもある地球儀などとは違い、秋球儀は手のひらサイズのものしかない。手のひらのサイズといっても、手のひらに収まるくらいのある一定のサイズ、というわけではない。手のひらの大きさが人によって異なっていることから、秋球儀の大きさも人によって異なっているのだ。もちろん、年齢によっても異なる。成長にともない、おれの秋球儀も大きくなっていった。

腕を失くしたのは二十歳になった日の翌日だった。なんてことはなかった。ただ、駅のホームで電車を待っていたときに、後ろの人にトンと押されて両腕をバランスをとるために前へ伸ばしたら、たまたま快速列車がおれの腕も運んでいってしまったってだけだ。結局おれが乗ろうとしていた駅から鈍行で3時間ほどかかる終点の駅まで連れて行かれたおれの腕は、お前がおれにくれた初めての誕生日プレゼントという形となった。病室でご対面。お前は着古した白衣のしわを丹念に指先で伸ばしていて、おれはそれを見ながら、ああおれはもうそういったことができないんだな、とあとになって思い出した。そのときはそんなヨユウはなかったようにおもう。お前は白衣を脱ぐとリハビリを終えたおれのために毎晩うちへきてくれるようになった。ボクサーパンツいちまいで林檎をよく剥いてくれた。フライパンを扱いよく火傷もしていた。キリギリスが鳴いていた。

両腕を失くした患者と、その関係を特別なものに変えたとき、ぼくはぼくの秋を彼に譲ってやってもよいとおもったんです。と、医者をやめようか迷っているあたしの相談に乗ってくれた旧友が、とつとつと話し出した。このヒトコトを引き出すためにビールを何杯飲ませたことだろう。秋が終われば冬になります。では、秋を失くしてしまったものは、秋を終わらせることができるのでしょうか。ゴツン、と旧友はジョッキをテーブルに置いた。これと同じのもういっぱい、とあたしは店員へ既に告げていた。彼は、ぼくの秋球儀を受け取ってくれませんでした。というのも、受け取るための手がなかったので。だから、ぼくは、ぼくの秋球儀をかつら剥きにして、彼の首にかけてやったんです。ビールおまちどーさまでーす。こちら空いたお皿おさげしまーす。他人の秋を身にまとって迎えた冬って、やっぱつめたいんですかね。やっぱぼくのせいなんですかね。あたしは何も言わない。医者をやめた今、空は秋模様であった。そんなことないし、傘もない。
  • 2014/09/30 (Tue) 20:09:16
秋模様を切り取って
少し肌寒くなった朝に
昔の切り取られた記憶が漂い
毎年、毎年、同じような気持ちにさせられる

あれは金木犀の匂いなのか
紅い彼岸花の色なのか
祭りの喧騒なのか

もうあの場所に帰ることはない
もう僕のことは許してほしい

そっと、このままで。
  • 博喜
  • 2014/09/30 (Tue) 20:18:42
秋模様を切り取って
最も鮮明に記憶されているのは
ランドセルの底から忘れた頃に出てくる学級通信
みたいに、
しわしわと波をうったような空
それから、
心細く付着していたひやりと撫でる風

傷んだ窓枠が強引に切り取った世界の欠片は
とても退屈で雄大で有限で
今更ながら在り来たりながら
どこまでも、どこまでも美しく
もう一度やり直したいけど、
きっと気付いてもらえないだろうし
そのうちにまた
誰かのランドセルの底でしわくちゃになって
思いもよらない秋の
模様、を

  • 星子アヤノ
  • 2014/09/30 (Tue) 20:21:38
秋模様を切り取って
マグカップに淹れたインスタントのカフェオレから立ち上がる、安上がりな煙が行き着く、油の染み付いた
換気扇とパイプ、非常階段と巣の跡、コンビニの看板、駐車場に止められた高そうな車の角に自転車をぶつ
けて、真っ青な左隣を、鼻歌が通過、みぎ、ひだり、前方用意、進めない点灯、点滅、歩道の隣、町の食堂
の蕎麦をすする、ミミズの足取りでゆっくり、斜めにむいた影はまっすぐ進んでいる、目を背けている隣の
階段を降りると朝が少しだけ短くなった、陽が眩しい、暖かい、少しだけ歩いた、少しだけ寒くなった、少
しだけ空メールが届いた、少しだけ空が遠くなった、何かが届いた、少しだけ宛先が違った、少しだけ笑っ
た、少しだけ宛先をかえて、足を運んだ隣の軒先に 少しだけ秋があった。

町を削ぐ、
足音を細切れにして、

若い枯葉の上に海月みたいな鈴虫が(寝言を落としている
  • あまさら
  • 2014/09/30 (Tue) 20:27:56
秋模様を切り取って(時間外)
 Kさんに聞いた話。

 骨董商をしているKさんは、掘り出し物を求めて日々、全国を飛び回っている。
 古い道具や美術品には、いわくのある物も少なくないと聞く。
 そういった物を扱ったことは今までにありませんかと私が訊ねると、Kさんは少し考えた後、一幅の掛け軸を出してきて見せてくれた。
「私自身は、あまり見たくないんですけどね」
 丸められた掛け軸が躊躇いがちに広げられると、そこには一本の椛の木が描かれていた。
 長い年月のせいか肝心の椛の赤色が黒ずみかけているのが残念だが、それでも素人の目にもはっきりと分かるくらい、とても見事な代物だった。
 どういう具合なのか、枝の先にある一枚の葉だけが、黒ずみを免れて鮮烈な赤色を保っているのが、余計に印象的でいい味を出している。
「これはすごいですね。まるで秋模様を切り取ってきたみたいだ」
 私がそう言うと、Kさんは横目で掛け軸を一瞥して、眉間に皺を寄せた。
 そして、掛け軸が収められていた箱の中から一枚の写真を取り出すと、それを無言で私に押し付けた。
 写真には、目の前にある掛け軸が写っている。
「その写真は、半年前に撮影したものです」
 Kさんが言った。
「目の前にある掛け軸と、写真の中の掛け軸。よく見比べてみてください。何かお気付きになりませんか」
 Kさんの言わんとすることは、すぐに分かった。
 目の前にある掛け軸には、枝の先にある色鮮やかな赤色の一葉だけが、どういうわけか描かれていない。
 これは一体どういうことなのだろう。
 光の加減でうまく写らなかったのか。
 それとも両者は似ているが全く別の掛け軸なのか。
 あるいは、まさかKさんが後から一枚だけ書き足したのか……。
 混乱する私の心を見透かしたように、Kさんが口を開いた。
「……これね、勝手に増えよるんですわ」
 吐き捨てるような、ぞんざいな口調だった。
「一年か二年ごとに一つね、何でか分かりませんけど、こういうふうに増えよるんです。でも、いったい何で、こんなことになるんでしょうね……」
 Kさんは憎憎しげにそう言ったが、私にはその理由が分かった気がした。
 そして、本当はKさんもまたすでに、その理由に察しがついているであろうことも。
 私がずっと椛の葉だと思って見ていたもの。
 それらはすべて、幼い子どもの――おそらくは、生まれてまだ間もない乳児の――小さな手形の跡だったのだ。 
  • 吉つ音
  • 2014/10/01 (Wed) 01:29:20

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