・さよなら
さよならという始まりがある。あったって誰かに聞いたことないかもしれないけど。樟脳の香りが指先に伝わるまで、ゆっくり肘から駅のホームの端っこまで手を振っていよう。
・青春の等しくふりかかる月日
青春小説を思い浮かべる。僕が読んだ青春小説に出てくる人たちの多くが、髪を金色に染めるか、先輩にヤキを入れられて顔がボコボコになるか、リストカットをしたりする。健全、と呼ばれるものは大抵メジャーな週刊雑誌に漫画っていうカタチで載っているから、小説には明るいことがかけなかったのか、それとも偶々僕の手に取る本がそんなのばっかりだったのか。少なくとも僕と青春はゲームとイヤホンに押しつぶされたまま冷えたカレーをずっと食べていますだ。
・「ごめんね」「ふりかえらないでふりきれ」
「千と千尋の神隠し」という映画を見に行ったのは多分小学生の頃だった。だが、その内容を理解出来たかというと実は全然出来なくて、ただ主人公の千尋が怖いことものから逃げていること、それしか頭の中に残らなかった。それより僕はクレヨンしんちゃんの映画、オトナ帝国の逆襲のラストシーンで、しんちゃんが血だらけになりながら、未来を掴むために必死に階段を登る光景の方が目に焼き付いたのだった。
・ふりかえらない/等しくふりかかる月日
先週僕が何をしていたか。昨日の私の晩御飯。年をとること。年をとらない方法。写真をとらないこと、写真を燃やすこと、もやしてしまうこと、それでも今日の晩御飯の写真をとろうよ。ふりかえらない?先月の給料、初めてのお使い、テーブルマナー、食器を割って落とす、破片が喉を、漫画みたいに掠めて、全速力でシャワーを浴びに浴びて、アンパンマンの絆創膏を貼り付けた、そこで初めて泣いた。十八歳の誕生日を迎えた時のように。志望校に受かった時。大学に落ちたとき。
・(ごめんね)青春の等しくふりかかる月日はふりかえらないでふりきれ
全速力を出せるくらい君のこと忘れてみたの。ブレーキみたいな青春だって、サブカルみたいな音楽しか知らなくたって、太陽に向かって走る勇気がなくたって、ブレーキランプが落石で粉々に砕けたって、靴が擦り切れて足がむき出しになって、苛立ちが突然不安になって、簡単な話に涙ながして、弄れた噂に気取っちゃって、難しい言葉をそれっぽく使って、色々転んで、ぶつかり合って、君のこと忘れてみたの。って君のせいにした。それでも僕は君に全部込めて歌うよ。どうして
・はじめまして
という始まりが終わりというのは、昔からある話です。つり革に右手をぶら下げた程よい密度の通勤列車のリズムに揺られて隣から可愛い音楽が聞こえる。螺旋階段を下から眺めてみてみたい。ふとそんなことを思った。
- あまさら
- 2014/11/05 (Wed) 23:22:14