水溶性キネマ
愁さんの結果発表の最後のコメントが水野晴郎さんめいていたので、水曜ロードショーからの水曜シネマ、大正ロマンっぽく水曜キネマと思ったのですが、いつもの悪いくせがでて、水曜を水溶に変換してみました。水に溶けるフィルム。消えてしまえ、記録ども。なんて言ったら映画好きな人に怒られるかしら? その怒りもどうか詩に昇華されますように。
よろしくお願いします。

  • こうだたけみ
  • 2014/12/09 (Tue) 21:21:57
水溶性キネマ
僕が書きたいのはこんなものじゃなくてと、主人公を消した
君はヒーローではない、そして、ヒロインとヒーローは別にいるのだ
両親はとても優しい、そして、君はとても優しい
正義とは何かを、サンデルに聞いても、もう少し脆い方が本当なのだ
鋭い切っ先ほど早く欠ける、細さに強度を持たせることは
材質が同じである以上、限界がある
それを無視して、愛してくれてもいいのだ
恐れを知らずに純粋さを突き詰めてしまったのだね
宇宙船のネジになるために進化してきた地球の生命は新しい地球を作れるのかな
そう言って自分の死んだあとの生命の心配をする君が
愛しくて馬鹿らしい
水溶性キネマだよ
しだいに溶けて忘れ去られる物語だけど、そこで生きちゃってるんだな
達観したふりをして泣きそうになる。
  • クローバー
  • 2014/12/09 (Tue) 23:06:06
水溶性キネマ
ビールは水曜のネコ。
おつまみは柿の種。
映画は、「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」のスプートニク2号で月にいったきり帰ってこなかったライカ犬に比べたら僕はまだましさと言うイングマル少年、「トレイン・スポッテング」のイカしたイギーポップの曲から始まる陽気なドラッグ青春の未来を選べるのか?、「ミツバチのささやき」の六角形窓ガラスとフランケンとアナ・トレント少女、「ホテル・ニューハンプシャー」のナスターシャ・キンスキーの熊の着ぐるみ、ジャック・タチの「ぼくの伯父さん」ゆるゆるコメディシリーズ、「マイプライベート・アイダホ」ボーイズらぶなキアヌー・リーブスとのリバー・フェニックスの美しさ、「勝手にしやがれ」ジャン・ポール・ベルモンドのセクシーな唇と指、グラン・ブルー、レオン、シェリタリング・スカイ、マルコヴィッチの穴、パリ・テキサス、冒険者たち、タクシードライバー、ニキータ、アニーホール 、バクダット・カフェ、ブルーベルベット、セックスと嘘とビデオテープ、シザーハンズ、エターナル・サンシャイン、マイ・ブルーベリーナイツ、死刑台のエレベーター、大人は判ってくれない、突然炎のごとく、緑の光線、軽蔑、ノスタルジア、エルスール、ロッキーホラーショー、花とアリス、スマグラ、PARTY7、鮫肌男と桃尻女 、木更津キャッツアイ、アカルイミライ、ホノカアボーイ、人のセックスを笑うな、百万円と苦虫女、亀は意外に速く泳ぐ、ハチミツとクローバー、ピンポン、クワイエットルームにようこそ、少年メリケンサック、デトロイト・メタル・シティ、蛇とピアス、非・バランス、恋の門、イン・ザ・プール、ソラニン、NANA、ドーベルマン、めがね、かごめ食堂、重力ピエロ、グーグーだってねこである、セーラー服と機関銃、さよならみどりちゃん、アヒルと鴨のコインロッカー、腑抜けども悲しみの愛を見せろ、、。

とりあえず、こんなもんかな、わたしのなかに溶けてるキネマって。

つづきは、どこかでまた。


  • 阿ト理恵
  • 2014/12/09 (Tue) 23:29:44
水溶性キネマ
水彩画みたいな
夕日を背にしている君が
逆光で見えない

シルエットの君が
滑らかな仕草で
ペットボトルを開けて飲み干す

青春映画のワンシーンみたい
ぼんやりしていたら
聞き逃してしまった

チケットはないでしょうか
もう一度
いまのシーンが観たいのです

記憶は水で出来ていて
流れは戻すことができないから
あなたも明日には
忘れてしまう

今にも夕焼けに
溶けて消えてしまいそうに
笑って見せるあなた

巻き戻し不可の
青春の真っただ中で
詩に書き留めることもしないで
  • 2014/12/10 (Wed) 01:35:39
水溶性キネマ
記憶の階段を一段一段昇るたびに
潮のように満ちてくる

おじぃちゃんの机のうえには
馬の毛
たぬきの毛
頬にやわらかいリスの毛
お米にも描けそな麝香猫
ありとあらゆる獣の毛の筆が屏風のようなものに
吊るされています
牡蠣殻が腐ったような匂い
なにかの液体を煮溶かしているのです
机の上には
花 一輪
 
白い紙の上を
仙人のような手つきが 滑ります
花を描くつもりだと言うのに
一学期が終わっても
皺の多い手が 塗っているのは白い画面です
「胡粉と云うのだよ」
ひとはけごとに なにかきらめきます
みたこともない沙漠の風紋が現われます 
謎の液体の中には真珠の粉が隠れているかのようです
「いや ほんとに 貝を砕いてできている絵の具なんだよ」


光の粒をふくんだ海のにおいを
ひとはけ 腕を弧のようにまわして
飛行機雲のように もう ひとはけ 
ひとはけごとに 光の砂丘で満ちてきます









いつのまにか えらく時間が経ったのかもしれません
もうすっかり星霜という言葉の美しさも理解できるほどです
とっくりと くらくなった心のまま 瞼を
閉じると 一瞬にして
輝く砂丘が
うごくのです

常に映し出される
ひだまり
しだいに 
中心から滲む
薄紅色
あの日の牡丹の花が咲いてゆく
  • るるりら
  • URL
  • 2014/12/10 (Wed) 10:59:16
水溶性キネマ
何度も何度もエンドロールは
下から上へと流れていくから
役者の名前もそらでいえるね
君のいちばんのおすすめ映画を
夜がふけてもながめてた

×

暗い海岸風になびいた女性の髪の毛
被写界深度のその先で
浅くやわいだ光の粒子
なんだそれってほんとは思ってたけれど
数フレームに宿った奇跡のことを
君は今でも信じてますか

×

90分で収まりきるのなら
これぞ理想にちかしいファンタジーじゃって
あれちょっとふざけてたよね
イマジナリーラインをこえるところで
破綻していた2人の関係性

×

色彩は感情を雄弁に語るんだって
そんなことに君は
いつも熱を上げていたね
あたりはまだまだうすぐらいけれど
そろそろ始発が動きだすころ
あの日定着できずにこぼれたブルーは
夜明けを前に息をひそめて
ひざしたあたりを回遊していた
  • さわ田マヨネ
  • MAIL
  • 2014/12/10 (Wed) 19:29:51
水溶性キネマ

一週間が終わる
日常系の映画が

月曜の朝を想像する
悲しい

今の音楽と
明日の労苦が
とろけてゆく

生きている
生きてゆく
すべてが混ざって
なぜこんなに悲しい

終劇はあるはずだけど
ない気がする

これは映画なのだろうか?
いや違うだろう

スーパーで汲めるおいしい水と共に。
  • 博喜
  • 2014/12/10 (Wed) 20:40:01
水溶性キネマ
●か行の女の子のために


旅の扉


〇かこ


東京の映画館だからといって、年がら年中人が入っているわけではないと知ったあれは、小さなタワーの地下であまりにも有名な映画を何度も作り直した映画。僕はその顛末を既に知っていたし、多分他の人も知っていたから、その日、土曜日の、春の日差しが、冬の作られた、暖かさを温め直すような、薄着で出かけたあの日、その日、誰もいない映画館のホールの真ん中に座って、分かりきったサスペンスを、ジュースを飲みながら眺めていた。女の子が水に落ちれば良かったのに、落ちなかった。男は水に浮かんでいた。女の子は発砲音を戸棚に突き刺したまま、警察だ。女の身体は血でまみれていた。警察が駆けつけた頃には女は首を吊っていた。ヨレヨレのコートを着た若い警部補が、何も溜まっていない腹の中から胃液を一頻り出した後、庭に出て発砲すると、女はもう一度胸に弾丸を刺した。男は再び床に頭蓋を、打つ、足音は上の階を歩く人達の雑多な銃声が悲鳴の幕を開ける。問題はここからだ


〇希子

紫色のカーディガンを着た、水色の髪の少女は、褐色の肌で、趣味はクラゲの観察。クラゲを見ていると慌ただしい毎日も中にゆとりができるとか、本当にゆとりのない人ならクラゲをみるゆとりある生活も、クラゲの世話をするためのお金もないはずなんじゃね?と、つかかってみたら、私の髪の毛って何色ですか?って返された。僕は鼻にストローを指してあぶくをオレンジジュースにプクプクを浮かべた。つまりそういうことだった。

アパートの解約をした後、有り金全部溶かし尽くした挙句に、会社を辞め、公園の一角にカーペットを引き、家電や家具を元の場所に設置するという引越しをした。電気はついていたソファーには水色の彼女と、水色のクラゲが座っていて、殆どコーヒーで出来たプランクトンを彼女らに飲ませた途端、砂場は真っ黒になった。冷えた電子レンジのタイマーだけが作動するキッチンで、水で溶かしたココアを咳き込みながら飲み干し、テレビの笑いは作られた笑いだと、分かっていながら画面を凝視するも、映るのは俺の顔とお前の顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔砂場はデロデロ潰れてゆくばかりで、吐く息は地上に届く前に次々と海に紛れた。

雨は降ってくる。


〇久子

幼馴染という隣は、アパートにおいては短い付き合いの連続であり、その年は僕の周りから四人の幼馴染が一挙に転校してしまうという、悲惨な年であり、ついでに周りには僕より年上の男の先輩がいなかったから、運動会の日、僕はクラス最下位の足を持って、地区リレーのアンカーを、五年生にして務めることになった。誰か助けてください。

一番目の幼馴染はピアノが好きだった。僕には姉がいた。姉もまたピアノを習っていたから、家にはちょっとしたキーボードがあった。姉の弾く、下手くそなバイエルに比べ、幼馴染の弾く名前の知らない曲の調べは、、、どっちもどっちではあった。僕はキーボードの設定をUFOの音に切り替えて幼馴染の演奏を邪魔したりするのだが、その度に幼馴染は曲を変え、僕は設定を変えた。最後にはいつも喧嘩した。

二番目の幼馴染とはカードゲームをよくした。遊戯王とデジモンカード、ポケモンカード。当時流行っていたカードには、これに加えてデュエルマスターズもあったが、登校時間の影響でその関連アニメを見れなかった僕らにとっては、やる意味がなかった。僕は足繁く幼馴染の家に通い、幼馴染は日々様々なカードを買っては僕を満足させる為にデッキを強くしてくれた。

三番目の幼馴染は、実はあまり接点がなかった。ただ一度だけ、喧嘩に負けて泣きべそをかきながら僕の家の前で体育座りをしていたので、家に入れたことがある、くらいのような、お土産を買って渡す。それ以外にあまり接点のないような関係しかなかったのだが、この前久しぶりにあって、そしたら、同じ思い出を沢山持っていて、沢山の思い出を同じくらい持ってたんだ、ってつい口にした途端、互いに



〇K子

こんにちは、私の名前はゴキブリです。という、とびきりの笑顔とセットの自己紹介と、手作りだという得体のしれないブラックサンドとブラックペッパーにコーヒーの香りを添えたような、異物を僕の元へ真っ先に持ってきた彼女のことなんて僕しらないんですけどねぇ。爪を調子こいて切ってしまった罰なのか、はたまた、飲みきれなかった牛乳を水道に流してしまったことが原因なのか、読みきれなかった本を紐で縛って燃えるゴミの火に掛けてしまったことが原因なのか。そもそも原因ってなんだ?原因がないことが原因?たんぽぽと向日葵が同居してしまったような違和感に包まれたシェアハウスの始まりはとてつもなく怖い。

彼女の名前は略称も塊なのでK子。彼女には料理当番は巡ってこない。代わりに彼女は面白い話をハウスの皆に、週二回もしなければならなかった。そんな彼女の話は、色々とオカルトめいていていた。サボテンと会話するサラリーマンの話。闘病生活を乗り越えた女の子の先に待っていた空っぽの話。身体が燃えている夫婦の間に生まれた息子が、車に乗っている間に焼け死んでしまった。という夢の話。猟師に黒くて長い尻尾を切り取られた腹いせとして、飼い犬を三匹沼に沈め、周到に猟師の精神を奈落の底に突き落とした後で、布団の中から猟師を丸呑みにする紙芝居の上演。などなど、彼女の部屋には一度だって入りたくなかった。

そんなある日、彼女がある漫画を皆の前に紹介した。その漫画はこういうものだった。「一日を何度も繰り返すことの出来る少年が努力を武器に運命に挑んでいく物語」彼女はこういった。「ああすれば良かった、が実現してしまう世界で、ああすれば良かったが言い訳として成立しない世界に、落ちこぼれが閉じ込められ、ああすればよかったを封じられら時、少年の前には繰り返すことの出来るという、ひたすらな可能性だけが提示だれる。努力を繰り返せば、その内「そうすればいいんだ」を見つけることができるが「そうすればいいんだ」はそう簡単に見つからない。だが少年は見つけなければならない。繰り返す権利が無限にある以上、言い訳はどこにもない。努力が運命と同じ土俵に立っている以上。繰り返すことを辞めた途端、努力は運命に屈する。屈するとどうなるか、努力は運命に劣る、ということが少年の中に位置づけられる。少年には努力の才能しかないのにね。これほどの地獄はないとおもうよ」



〇ココ

「寒いね」
「そこまで寒くはないな」
「さむいね」
「さむいね。」
「ワンワン」
「こいつは犬だった」

しかし、犬でありながら、犬ではなかった。
私は物を書くことが好きではない。本当は音楽とかアニメとかやってみたいのだが、しかし、私には絵を書く才能も、ギターを弾く才能もない、、という仮定が正しいと思っているので仕方なく、文字を書いている。キーボードを打つことなら今すぐにでも、誰にもできるからだ。しかし、問題はそこからだ、ということに気づくのに半年かかったのだった。文字を書くことが誰にでもできるなら、文字で誰にもできないことをするには、相当な苦労が必要だ、という当たり前のことに、漸く気づいたのだった。プロゲーマーがプロ足り得ることがどれだけ過酷なことなのか、以前何処かのインタビューで読んだ記事が、朝目覚める度に私を襲った。頭が痛い。ココは私の布団の上で小さく包まっていた。くるまっていたから、抱きしめてしまった。これは犬ではなくただのぬいぐるみだった。本当のココは紙の上にいた。ココは不器用な会話で不器用な言葉を話す怪物だった。俺だ



●かきくけここ

アンケートに答えようとしたが、質問が一切書かれていなかった。白紙を折りたたんで飛行機にすると腰が痛くなった。東北から九州まで二時間しかないなんて。離陸の際の鼓膜の痛みが、まだ尾を引いていた。尾は地上の噴水から黒いガソリンを海に吐き出していた。砂浜に打ち上げられた少女の上に空から少女が被さり、傘を回しながら不時着する言葉は女の子の皮膚を剥いで男にした。男の名前を持った女は、いつしか子供を産み、子供は瘡蓋から剥がれ落ちる膿に涙を落とし、浮かべ、水たまりに貼る虹色の油を反射する太陽光が門を閉ざし、女は旅を続け、僕はそれを眺め、誰もいない飛行場に不時着した綿毛から芽が生え顔を出し、潰され、裏庭で射殺された女の唇から溢れた弾丸が僕の足首を映写機の光を空に歪めた。歪めた。歪めた。観何処にもいない。観客は僕なのか。主演は、東京の春は暑い。日差しは眩しい。焼けたコンクリートの熱をさらうように落ち葉が駆けていった。その後を追う主役は、足跡は、小さく何処かに、どこにも、いない。

水溶性キネマ。
カ行だけが、庭に鼻を咲かせる、




  • あまさら
  • 2014/12/10 (Wed) 20:52:55
水溶性キネマ(投票対象外)
水に溶けるフィルム。
消えてしまえ、記録ども。

下手なコピーみたいだねって
つながった掌の湿り気
そこから溶けだしていたとも知らずに

私が私になるために積み上げたものが
ゆっくりと 確実に突き崩される
あなたの顔がわからない
指先から 甘い 絵の具のにおい

もうここにないものは数えない
今日あったもの
昨日まであったもの
さわることのできないなにか
ふれてはならないなにか

一滴の水が波紋を広げるように
端から翻っていく記憶
スクリーンの裏側から見た
左右反転の顔、顔、顔

いつかの私への復讐のために
映画のラストシーン気取る
しあわせはいつだって
うつくしくなければならない
  • こうだたけみ
  • 2014/12/10 (Wed) 21:18:24

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