悲しみの透明なあり方
うたのようにI
湖水の波は寄せてくる
たえまなく岩の頭を洗いながら
底に透くきぬの砂には波の模様が……
それはわたしの中にもある
悲しみの透明なあり方として

大岡信『記憶と現在』より引用

これで行きますか。

  • はかいし
  • 2015/11/01 (Sun) 21:21:53
悲しみの透明なあり方
藤棚で大伯父が憩って居る
深く沈思して
図書館から帰って来た私を迎えるかのように
顔をあげる
それは昔日の額に傷を付けた石を
石器と勘違いしているかのような
原初を思い見る様な眼をして
藤棚の下の石製椅子から半分立ち上がる
時間を泳ぐ事によって
悲しみを透明にして来た大伯父の
最後のイヴェントが
水平線に消えて行った
嘗てはパソコンの前の椅子で起こった事が
車を降りる直前で発生する
スーパーマーケットの駐車場で
私は大伯父を偲びながら
シートベルトが尻に触れて来たかのような
錯覚を持て余して
煙草をふかした
悲しみの透明なあり方が
マグナム弾と成って
消えて行った
師走の喧騒を思い出しながら
  • ぎわら
  • 2015/11/01 (Sun) 22:36:05
悲しみの透明なあり方
悲しみの透明なあり方

私の母は80歳を過ぎた頃から短歌を作り出した
はじめるには余りにも遅いよと
言いたくなるほどであったが、
それにはやはり動機はあったように思う
1. 大岡信の折々の歌を読んでは切り抜いて
赤い小さな塗り物の小箱に入れていた
日々の蓄積が書くレベルに近づいていたのかもしれない。
2. 幼馴染が何十年ぶりかで便りをよこし、それには私家版の短歌集が同封してあった。
私だってと生来の負けず嫌いに点火したであろうことは間違いない
その短歌集は何十年にも及び日々の感慨が素直に綴られており
技術に頼らぬ作り物で無いその人のそのものが表現されていたが、
しかし、決して上手では無く、母がこれならば私にも書ける
と思ったほど技巧のない素朴で具体的な表現そのものであった
そして、こっそれと書き出し、10何年後にあの世に行った
このことを知っているのは私だけで、いつか、法事の時にでもごく親しい人に配ろうと思いながら10年が過ぎた
大岡信展が世田谷文学館で開催されているから、母の供養もかねて出かけようかと思っていたので、このタイトルは少々厳しいところを付いていて
透明感に乏しい母とその幼馴染の歌は中空に漂うしかないのだろうか
それともそれらを読んだ子の私が負うべきなのだろうか
いつか、透明な詩を書く人が私の言葉は雑音に満ちていて、言葉から泡出すようにぶつぶつとノイズが放出し続けていて、多様なイメージが読み取れると、上手に言い繕ってくれたのを思い出す
地名論の彼の朗読でも聞きなおし、気持ちを若くして鈍い感受性を鋭くして透明感を育てなければならないなと書きながら思っている
  • aoba_3k
  • 2015/11/01 (Sun) 22:51:48
悲しみの透明なあり方(短歌)

悲しみの透明なあり方よりも楽しみの存在の軽さに


たちまちにうっかりうかれ浮遊するさみしさをのむホットチョコレート


そこからはおはようさまにこんにちはさよならにさよならする憎しみ


透きとおる心臓に羽いちまいでどこまでいけるどこまででも


きみたちはどこまでいってもきみたち悪いきみたちきれいいここち


  • 阿ト理恵
  • 2015/11/01 (Sun) 23:15:14
悲しみの透明なあり方
静かな階段を登っていく音
少しづつ段を登っていく音
君の視線を指に感じた
スロープの色が段々透けていくのを
溶けていきそうな段に見ていた
町色に染まった街路樹の葉がこぼれ落ちていくのを

赤く溶けた
ガラスの透明な夕焼けに
手を添えながら町を降りていくのを
スロープが伸びていって分かれた
Y字路の先に群がる影法師がだんだんとけて
水になっていくのを
そこに垂らした指先の血や涙が
赤焼けの空に混じって

段々暗くなっていくのを
肌の上に流れる汗や抜けていく透明になった君の髪の毛から
いずれ町になっていく
君が溶けた場所へスロープが伸びていく
  • あまさら
  • 2015/11/01 (Sun) 23:32:56
悲しみの透明なあり方
かなしみのとりは
かなしみしみこむほどに ちいさなかずを 数えるように うたう
おもいはいつも一になることない
かなしみが 椎のこずえを ゆらしてる

かなしみかなしみかなしみかかななししみみみみみ
しみしみしみしみしみしみみしみしみしみ
みみみみみみみみみみみみ
ななななななななな
しししししししし
ごごごごご


ひとりのとりでで
きょうもうたう
  • るるりら
  • 2015/11/02 (Mon) 12:30:50
悲しみの透明なあり方
ソンナコトバハキライデス日常から切り離され取り澄ました言葉なんて体の表面つるりと滑っては落ちてゆくだけどこにも引っかからないワタシノッペラボウデスののっぽな棒にはA3POPペラを巻きつけはたはたと風にはためく言の葉に見えますか洗濯物めく乾燥する言葉たちはカタチばかり整えたって中身が伴わナインだったらいま干したところなのそりゃまだ着られナイン切られナインとナインの次が出てこない詩の言葉は散文の言葉にはできないのですから私にはどうしたって他人様の言葉などきられナイン、テン。は透明すぎて悲しくて。
  • こうだたけみ
  • 2015/11/02 (Mon) 14:03:28
悲しみの透明なあり方
でたらめな線分をひくと
みえてくる満ち引きについて
なくことを正しくすること
ぼろぼろの日々にあって
どうして笑うことを
きみに繋げることができよう
ふたりの変遷に引き積めた
かなしみが垂れる
なくすことが欠けるように
しずかに組み立てられる
わたしはわたしに
じゃまになることはできず
きみの前で透明にある
  • かんな
  • 2015/11/02 (Mon) 15:44:41

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