鬼の豆は大豆である
ダイズを焙烙で炒って
少し焦げ目が出来たかなと
感じた頃合いに火から下ろす
こりこりしてとても美味しい
鬼に食わすなんてもったいないよと
豆まきの前にこっそり自分の分を取り分ける
鬼は外 福は内のかけ声の下に豆は転がる
もったいないから外には少ししか撒かない
鬼には入りやすい家だなと
思いながらも
入ってもあまり良いことは無さそうだ
隣家の方が金持ちのようだ
盛大に鬼は外のかけ声に鬼たちはみんな集まってきて
美味しい豆を痛そうな顔をして捕り集め一口で飲み込んでいる
彼らは贅沢に慣れているのだ
福は内の我が家は鬼は居なくなり
貧乏神だけが福の神の装束を着てやって来た
そんなこと知らないわたしたちは
餓鬼となって昼間念入りに掃除した畳の上の豆を拾う
無くなったら、タンスの脇やら、奥まったところまで念入りに探し回る
万一ひとつでも残っていたらねずみに食われる
ねずみは鬼よりも始末が悪い
天井裏で騒いだり台所の食料を狙う悪い奴だ
ねずみ入らずにいちいち入れるのは本当に面倒だ
猫いらずを台所の片隅に置いているが
利口な奴らは決して食べない
ねずみを追って入り込んだ隣家の猫が食べたりして
面倒なことも起き上がるから
猫いらずも使いにくい
ねずみの食べられるものを無くすのが一番だ
その上で猫を飼う
鬼のことなんか気にしている暇が無いから
貧乏神はつまらないから呆れて出ていく
本当の福の神は子供たちで
猫を抱いて嬉しそうに隠してある炒った豆を
ボリボリ食べる
猫は食べようとしないで喉をごろごろ鳴らすだけ
至福の時とはこの時だと本当の福の神を満足して
お帰りになる
- aoba_3k
- 2016/01/28 (Thu) 23:10:56