久方振りの帰郷は乗継ぎに次ぐ乗継ぎだった
その度々に陥る浅い夢は
まるでそれぞれが綿菓子のような悪夢であった
決して俺を満たさなかった故郷
ただ
決して不幸なだけではなかった
俺は
地平線の向こうの理想郷でひとり
金儲け
そして
ナンパの方法を学んできた
昨日の夜
Barに
初恋の少女
に似た女性がいた
かいつまんで話そう
彼女は笑顔が素敵で
二の腕を露出させた格好は凛としており
ウイスキーを御馳走したら
代わりにとても甘い蜜を御馳走してくれた
翌日
大晦日
彼女を家に帰し
大掃除を行い
荷物を纏め
家を出る
ナンパに必要なのは
センスとスマートさ
そして
女性の美しい部分を
女性に気付かせてあげる真摯さ親切さ
ナンパは
女性を決して不幸にしてはいけないが
かといって
決して幸せにしてもいけない
日常の枠から外したのが俺なら
日常の枠の中に女性を戻すまでが担うべき責務だ
女性が
いつか
私にもそんな事があったって
ふと思い出して
頭を少しかきながら
ひとり空に向け苦笑いできるような
決して不幸にしてはいけないが
かといって
幸せにしてもいけない
あくまでナンパの枠内に留まるのなら
話が逸れたが俺はiPhoneにこの詩?を書きながら、寝ながら起きながら、電車に乗っている。といってももう地元の路線の上だ。
いつか俺もこの街に住んでいて、この街で詩を書いていた。覚えているかな、俺のこと。
果たして俺は誰かに覚えられるような事をしてきたのかな。
地元でナンパはしない。綿菓子のような悪夢は女の体温で容易く溶けるが、俺はそうはしないだろう。この数日、溶けない綿菓子を俺は胸のあたりに置き去りにしたままにしておくだろう。
昨日の女の二の腕を思い出す
両腕を押さえつけられながら
笑いと悲鳴が等しくなる高みにまで昇り詰めてみせた
今晩はどんな悪夢を見るのだろうか
あんな夜の後では
それが少し楽しみですらある
悪夢に似せた綿菓子に包丁を当てると
ストンと下に落ちて行く
開いた断面はツヤツヤと整っており
それは悪夢よりも綿菓子よりも
大根の断面に似ていると思った
以前のままではない
地元の商店街を歩く
俺はこの地を離れすぎた
道行く人
知り合いだとしても気付かないだろう
それにしても、地元の冬の夜道は寒い。
- 竹森
- 2016/12/31 (Sat) 22:01:20