渇いている
足音と荒涼だけが支配する世界を
歩んでいる
何もないと言うよりは、足りない
何が何の為にかも分からない
ただ、渇いている
空を行く鳥さえもなく
独り、歩く
何かがある
からからに干涸び尽くして、落ちている
朽ち果てたそれは
元が何であったのかも分からない
死体
分からない程乾いているのを見て、
傷ましく思うよりも
悼み葬ろうと思うよりも
こうはなりたくないと思うよりも
とりあえずとにかく今は歩かなければ
泉を探さなければと考えていることに、
渇いている
と感じる
その寂しさに流す涙も湧かなければ、
血も涙もないと言われても
仕方ないのかもしれない
ならば血ではなくオイルでも流れているのか
オイル、と思った途端に
どろどろと黒いものが脳裏を溢れていく
泉では足りない
せめて海を見つけなければ
いつの間にか
本当にいつの間にか指先に小さな瘡蓋があった
僅かに乾き切っていないそれを口に含んでみれば
どこか懐かしく
母乳を吸う赤子を通り越して
胎児に戻りたくすらある
赤い血を濾して白い母乳が生まれ出る
一声、高く、鳴く声を見上げれば
赤く、赤く染まる空を飛ぶ影を見た気がした
ああきっと、
あの赤を目指していけば海がある
- 白
- 2017/01/16 (Mon) 11:04:29