まぶたを閉じる前に見ていたのは、きっと青い表紙の本だっただろう
あるいはノートだったかもしれない
窓から空を眺めていたような気もしたけれど、そこはもう夢の中だったようだ
沈んでいく、飛んでいく、風に吹かれて、揺れている、波に流されて、
青の中で、
船を漕ぎ、櫂と、カイト、蛸と、海と、貝と、クラム、目が眩むほどの太陽の反射
書き留めようと握りしめた手には、櫂ではなく書き甲斐のある唄と鉛筆
波と鳥が囀り、
ふわふわと抱き留められて見えるのは、何の青
空の青、海の青、証明写真の背景の青、通り過ぎた青、もう桜の枝は青葉、
朝日が差している。
眺めていた空には白い雲、そのキャンバスに何を描いたか
覚めたらきっと、もう思い出せない
写真の中から誰かが何かを言いたそうに
ああ、それは明日のわたしなんだと気づいて
わたがしみたいなそれを、わたしの詩にして、
縁日の屋台みたいに袋につめて並べよう
と、
声がアラームの音と入れ替わった時、
明日のわたしは、今日のわたしと入れ替わり
鳥が空へ飛び立っていく
後を追いかけないと、白から灰に、灰から黒に、雨雲に追いつかれてしまう
その前に、表紙を開こう
- 白
- 2017/05/06 (Sat) 15:27:51