即興ゴルコンダ（仮）

「信号」にて、よろしくお願いいたします。

点、滅する相づちに恋をする
自由が風に吹かれて飛び
切り替わる合図に自惚れる

人の群れで待ちぼうけるわたし
点、点とあいの音符を敷き詰め
きみが弾き奏でるわたしの旋律

交差、点で大の字になって
きみに惹かれるのを待っている
春から夏にかけての、助走を

信号が青に変わる
朝だ
こちらの道の生き物たちは
あくびをしながら動き出す
夜行性の動物たち
赤信号で休んでいる


あわただしく走る
あの子は右折してった
私はまっすぐ前を見る


黄昏の信号で
ゆっくりスピードを落とす
ああ、眠い
疲れた
ブレーキを踏んだら
あの子が目の前を横切った

トン トン ミー

世界中の全てのひとに
気づかれない信号が

トン トン ミー

ほっと息をつく

明日も明後日も
ありつづけますように


トン トン ミー
トン トン ミー

明滅、すこやかに
忘れたかったところだけ白い
横断歩道で
やわらかい歩行をくりひろげて
のくのくと進化してゆく
きいろい猿たちのグラデーション
は、波になってうねり、そそぐ西日
ふりかえって美しく
なって、しまったところから朽ちて
ぼくらを拐っていってくだけた波間からは
あぶくだけが話をするから
夜はすっかりと更けて
横断歩道、白いところだけ
渡ってゆく

信号にバターを塗って
川を泳いだ
泳いだ後は
ロミオとジュリエットを鑑賞する
場が無かったので
助っ人を呼んだ
和知喜八の俳句を読む
蚊が低空飛行する
ロブグリエに消しゴムを貰った
田は母の故郷だと思うと
バター塗れの信号が走って
とてもチゲ料理が食べたくなった

この色が変わったら 歩を進めることができる
この色が変わったら 立ち止まらなきゃいけない
渡り切らなきゃ
渡り切らなきゃ

目を開けて
しっかりと見つめていたら
目を閉じていても
しっかりと見えるようになった

赤が好き
だけど
止まっているのは嫌い

赤が好き
振り返って赤をじっと見ていられるように
駆け足で