ベランダ越しに道が湿っているのが見えた
雨が降っているのか降っていたのか曖昧な
朝なのか午後なのかも曖昧な空は
僕の心まで曖昧にする
全身がほんのりと怠いが熱は高くなさそうだ
体力が落ちているからこそ動くべきかと
億劫ながらサッシを開けて空気を入れた
湿って冷たいぐらいの空気が心地よい
からりとしていたらかえって辛かったかもしれない
元気を出すことを強要するような太陽は
多分まだ僕を責め立てただろうから
傘を差す通行人が雨降りを知らせ
と思う間に雨音が聞こえ始める
雨だなと分かりきったことを呟いて
顔を洗いにいく
水の冷たさにようやく生きた心地がして
インスタントのスープに湯を注ぐ程度の力が湧いた
強まる雨音は部屋の静けさを強めて
雨が吹き込む前に急いでサッシを閉める
換気はもう十分だ
もう十分だ
もう終わりにしよう
もう
世界をぼやけさせる雨の向こうに
様々な場面がまざり合って同じ台詞を言う
その言葉だけが強く
強く鮮明で
強く雨が地を打つ
どこからやり直せば消えるだろう
あの雨の日の言葉は
湿った冷たい空気が言わせたのだとしても
あの日が晴れていても
雨はいつか必ず降る
そんなことは分かりきっているはずなのに
こんな日には雨の向こうに
まだ
遠い日が重なる
まだ雨脚は強いけれど
そこのコンビニまででもいいから外に出よう
一歩進む度にひと混ぜ
溶け残りがないように
透明になっていくから
今日ぐらいはあの日の雨に沈んでいたい
通りすがりの咲き始めの紫陽花に
許しを乞いながら
また
一歩足を踏み出した
- 白
- 2017/06/16 (Fri) 08:53:12