わたしは刃物でウツボを殺してしまいました。
白状します。
やってないなんて嘘です
わたしがやりました。あなたの大事なウツボを八つ裂きにしました
嘘です
本当はテレビで捌いてたのが本当においしそうだったから
好奇心で、つい、かっとなってしまって…
そういうのも嘘
ウツボに噛まれて生きる事をやめられたら、
なんだか楽だなって思ってしまって
社会って人間に厳しいから、ウツボ君の力を借りて
ちょっとだけ楽しようとしたんです
そしたら間違って、その、やっちゃったんです
だから、その
ごめんなさい
悪気はなかったんです
嘘です
やる気はもともとありました
嘘です
そんなことしたらおこられることなんて最初からわかってたのに
なんでそういう事をしてしまったのか
自分でもよくわからない
だからなんであなたに怒られてるのかもわからないんです
気が付いたらウツボを殴って血抜きをして、刺身にして食べていました
皮の部分をバーナーであぶって食べたので
こりこりしておいしかったです
あんなおいしいウツボ、二度と味わえないだろうなって
おもって全部食べた所にあなたが帰ってきて
110番されました
嘘です。
そんな訳ないでしょ
ばっかじゃないの?
とか思ってたら何故か新しい女性の方がやってきて
三人で酒盛りが始まりました
あなたは、生きたアイナメをビニール袋で三重にしばった青いバケツに入れて、電車の中をえいこらしょえいこらしょと
一生懸命運んできたらしくて、
自慢気に大所で捌き始めたんです
もう、本当はウツボに飽きてしまったからだそうで
だから、わたしがウツボを捌いて勝手に捌いたことや、
そのウツボでわたしの手首が傷ついて粉々になってしまっても
責任はとれないよって
だから、お前なんかもういらないそうです
わたしは鬱になりました
あなたの首元にかみついてやろうとしましたが、よっぱらっていたので
いつのまにか、わたしは海の中に投げ出されていました
ビニール袋の中から見上げる星空はとてもきれいでした
私はサメです。
ふかひれだけ取られて満足にも泳ぐことのできない
魚なのかなんなのかわからない
とりあえずサメ、サメ、サメ…
切り取られてしまった尾びれをばたつかせながら
わたしの水深は低くなっていく
そのまま眠りについて明日が来るころには
海底のウミユリに抱かれて
今度は別の魚に生まれて
あなたに最後まできちっと食べられたいな
- あまさら
- 2017/07/30 (Sun) 12:11:57