叫ばずにはいられなくなったんで、
ある日、口を埋めたんです
順番を間違えたんです
だってね、口を埋めても、悲しい声は聞こえてくるでしょう?
それで耳を埋めたんです
たまらなくってね、だけどそれも間違いだった
見えるでしょう?痛がっている傷口とか、涙とか
それで瞳も埋めたんです
視ることと聴くことと声を出すことができなくなって
やっと眠れるなって思ったんですよ
すると不思議ですよね
嗅覚がどんどん発達してしまって
花の匂いとか、食べ物の匂いとか
最初は楽しんでいたんですけどね
だんだんとね
懐かしい、知っている匂いとか
そんなものばかり鼻が嗅ぎわけて見つけてきちゃってね
そうすると
フラッシュバックって言うんでしょうか
叫ぶことも泣くこともできなくなると余計につらくてね
結局、鼻も
本当にね
最初から間違えていたんですよ
心を埋めちゃえばよかったんです
ただわたしにはその方法がわからなくてね
結局心が残っているから
逃げ出した自分を責めたり、
あの時もう少し余裕があれば
助けてあげられたんじゃないかとか
毎日考えてしまってばかりいるんです
それでもあの時あのままでいたら
衝動で飛び降りてしまいそうでしたから
心を埋める方法で助かったひとたちもいますよ
だけどやっぱり
心を埋めてしまったひとと心を持ったままでいるひとが
一緒に暮らすのは、どうも無理が多くて
この街は心を埋められなかった方の街なんです
見えないのでおかしな動きをしているかもしれませんが
そこはご了承くださいね
ああ、この文章が見えるということは
心を埋めてしまった方の方々だったらごめんなさい
- will
- 2017/10/11 (Wed) 04:20:01