「ここに誰か、わしを知っているものがいるか。ここにいるのはリアじゃない。こんなふうにリアが歩くものか、話すものか。リアの目がどこにある。猟犬が鈍ったのか、見境もなくまどろんでいるのか。冷めているのか。そうじゃない。言ってくれるものはいないか。わしが何者であるかを。」
「リアの影法師さ」
―ウィリアム・シェイクスピア『リア王』第一幕第四場
かわせみをきりさくように
すでにきりさかれたじゃっくが
殺されたひとびとによって
逆殺されるように
わたしはなにをつなぎとめることで
なにをいろどることで
わたしになれたのだろうか
わたしの頂上に立つ
一匹の悪魔が
自身の首をまっ二つにして
わたしにそれを渡してきたときに
それを受け取る事が
私の中の影を
私の中につなぎ止めるための唯一の策だとしたら/しても
世界中のリアを
リアの目の先に立つであろうかみかぜをひっこぬくであろう
途方もない調印の束を
王冠をひっくり返してしまえば
道化になる
すでにきりさかれた王国から
土地の名前が失われ
小さな聖堂の壁は
血泥でおおわれ
その後ろに隠された
この土地の名前を新しい王の名前で塗りつぶす
わたしの名前は違うわたしの名前に重ねられて
厚みを増した層となりて
苔むした祠の中に祀られた
一対の鏡の中で延々反響している
- あまさら
- 2018/03/14 (Wed) 16:07:42