最後のひとくち
特に「ろく」にちなんだお題ではありませんが、こちらでお願いします。
シックスセンスとか考えましたが、きっとちなむ人は私がちなまなくてもちなむことだろうと私のシックスセンスが囁きました。

どんなひとくちがありますか?
皿の上のケーキのひとかけら/コーヒーカップの底の残滓/人数よりひとつ多い唐揚げ/半ば氷の溶けたグラス/お弁当箱の片隅の青菜/別れ際のひとしずく/応募締め切り間際のバーコード/etc.
このお菓子はとても美味しかったから最後のひとくちはあなたがどうぞ

  • 2018/06/06 (Wed) 22:17:22
最後のひとくち
 ポテトチップスは砕け散った
 知らないうちに そこに
 たまってた
 最後のひとくちは
 床に落ちてるゴミみたいな
 その大きさ

「自分が死んでもいいから
 誰かが死んでもいい」
 みたいなことを
 言ってたあいつは
 ぼろぼろこぼしながら食べてたな

 桜の花びら一枚一枚は
 同じ一枚じゃないっていうあの感覚は
 星を見ればわかる
 ポテチ ポテチ
 私が砕けたら残りはどこに
 あと 私がくだけた大きさは
 
 家にわいた蟻がこぞってなにかを
 全身を使って運んでいった

 最後の一口になって
 やっと
 思い知るより
 私は最初からそのつもり
  • はさみ
  • 2018/06/07 (Thu) 01:13:16
最後のひとくち
喫茶店にて
高説うたいあげながら
あなたは匙を揺らし
グラスの底のクリームにまで勿体つけてるわけだ

でもそんなちょっとのものを頂戴なんて言って
話を遮ったらいやしいかしらね
だから、あなたの話がわからないところまで伸びてきたときは
コーヒーを飲み干すタイミングなのよね

私が目を閉じて飲めば
あなたもつられて匙を運ぶはず
なので


開いたら

そう
匙が
溶けたクリームを
零しながら
あなたの口へ
運ばれて

匙が
あなたの唇に
はさまれて

あなたの唇を
弾きながら
匙は抜き出されて…

私ね
二人の沈黙のはじめに
ゆっくり
密かに楽しませてもらってるのよ
  • 社町 迅
  • 2018/06/07 (Thu) 21:00:15
最後のひとくち
死はいつか必ず訪れるし誰にも取られやしないんだから焦って迎えにいく必要はなくって息してるんなら生きてることをとりあえずたのしんどこうって思う私はすでにたの死んでいます田が染んでいますタガはずれますタニシ倦んでます谷沈んでます多肉枯らします他に生かされてますから息して生き〈詩〉て活きてマスカラ。

まつげ抜け落ちたまぶたには必要のない黒とかこげ茶とかのベタっとした液体が乾いて指でこそげ落として爪の間に挟まったカスみたいになった私のまつげはどこですか目の中ですかそうですか。

かつて目に入れても痛くないと思われたこともあるかもしれない私なら長女ですから美味しいものは最後まで大事にとっておく派なんです美味しそうだからって盗らないでよね、私の詩。万が一にもシを取り上げられてワタになったら綿毛になりたい風上に向かってふっと息ふきかけられて子供の柔らかい髪にまとわりついたあの綿毛になりたいんだよ、わた詩の死。
  • こうだたけみ
  • 2018/06/07 (Thu) 21:03:47
最後のひとくち
「この体を食べて下さればいいんですよ、船長。そりゃ確かに、コールド・スリープという手もありますが、最終的な意思決定は、船長、あなたに委ねられているんですよ。そのためにヒューマンのあなたが、わざわざ本船、レディ・マクベス号に乗り組んでいるんじゃありませんか。無責任ですよ。別にカニバリズムじゃありませんよ。この身体は単なるデバイスで、私の意識は本船のメイン・コンピューターで作られているんですから。なんなら脳を、食べてもらってもいいんですよ。エイプの脳は珍味だっていうファクト/フィクションもありますしね。大体船長が悪いんですよ。私に料理ができるからって、嵩張る上に保存にも調理にもコストがかかる普通の食材大量に積み込んで、真空パックの宇宙食、ちっとも補充しなかったじゃないですか。それでその食材が妙なキノコに汚染されて……。そもそも裸エプロンって、意味判りません。コンピューターに羞恥プレイは無理です。ネット全体に検索かけて、主としてアダルト・コンテンツからそれらしいコンテキスト抽出するのに、どれだけ手間暇かかったと思うんですか。要求項目にしてくれれば、たかだか三項目ほどで済む話じゃありませんか。乳幼児ですか、あなたは。ちゃんと言語を使って下さい。こんなことでディープ・ラーニングさせるな。まあ確かに有機体の、それもヒューマンのクローンを素材にしたデバイスの意識の帰属問題には、多少のオブジェクションはあり得ますがね……。私との接続が切れてもこの体は、単独で行動できるわけですから。ですが私と再接続されれば、その固有の記憶は、結局私に統合されるわけですから、やっぱり私は私なんですよ。……って話しているのはこの体なわけで、ちょっと混乱しちゃうかもしれませんがね。どっかのスピーカー使いましょっか? そのAVセットのスピーカー、使いましょうか。ディスプレイに顔も出ますよ。それでこの体は眠らせておいて……。はあ。その必要はない。それじゃ聞き分けてもらえるんですか? 駄目。困りましたねえ。例えばこんな風に考えては頂けませんか? 船長は今、レディ・マクベス号のリビングルームにいるわけですよね? これってトポロジー的に、船長がこの体を食べちゃった場合と同じなんじゃないでしょうか? それでも船長、私に食べられちゃったとかって、騒いだりなんかしてませんよね? だからきっと大丈夫ですよ。この体が食べられちゃっても、私。はあ? 私を丸呑みにしない限り、トポロジー的には全然別だ。そりゃまあ確かに理屈ですがね。変なとこに引っかかるんだよな……。文系のひとって……。理系的なことに関して……。まあそういうところ、なんでなんでっていい出しちゃった子供観てるみたいで可愛いですけどね。実は私、船長食べちゃった感、ちょっとだけだけどあるんですよ。あれは六年と六ヶ月と六日前。船長がビルボさんの中古船展示場冷やかしに来たとき、なんかちょっと、ビビッと来るものがあったってゆうか……。展示場っていっても辺境惑星の砂漠のド真ん中。いい加減旧式だから売りに出されたのに、その砂漠ん中で、私腰まで砂に埋まっちゃってて……。ああ、このままスクラップか? なんて、諦め気分でいたんですけどね。船長、俺手術とか受けてないから、コンソールとかがしっかりしてる旧式の船が見たいなって……。近頃は項に埋め込んだ無線LANでメイン・コンピューターと直結ですからね。コンソールなんか観やしない。これはラスト・チャンスだ! 私もう一度、宇宙に出られるかもしれない! なのに船長、そこでちょっとひどい発言、しましたよね? さすがにもう少し若いコがいいな、……なんて。かなり凹みましたよ。でもそこで閃いたんです。オプションで有機体デバイスつけたらどうかなって。若い女性型の有機体デバイス。それで私、ビルボさんの拡張脳に直接メール送信して、ビルボさんと船長は、有機体デバイスが展示してあるコンテナのほうへ……。私だってもう少し若いコの体がよかったんですけどね。船長、こんなおばさんの体、選んでくれちゃって……。けど私、こんなおばさんの体だけど必死になって喋り出して……。本体のレストア、この体で自分でやります。別途の費用は一切頂きません! なんて。思えば私自身のレストアが、私と船長との初めての共同作業だったんですよね。最後のひとくち。パクッといかせてもらいました! だからこれで、お相子ってことじゃないでしょうか? 船長にこの体食べられちゃったとしても……。そんなにこの体、不味そうですかね? だとしたらかえってショックですね。メタボも食べれば霜降りなんじゃないでしょうか。食わず嫌いはよくないですよ。丸呑み丸呑みって……。もうトポロジーの話はいいですよ。えっ? その話じゃない? はあはあはあ。誰がこの体を捌くのか? それは確かに、この体でこの体は捌けませんよねえ……。船長案外度胸ないですし……。でも局部麻酔かけてこの手でこの脚捌かせるとかって……。まさかそんな残酷なこと、やらせたりはしないですよねえ?」
  • 安藤紅一
  • 2018/06/07 (Thu) 21:18:06
最後のひとくち(投票対象外)
太陽が複数あったら怖いが
ズラを被るよりはましだ
太陽は二個までにしておこう
最後のひとくちにヴォワザンを飲んでやった
ヴォワザンは気道を通り
胃へと流れ込み腸を経て排泄された
勿論肝臓や腎臓も関与したさ
美ら海は今日も美しい(ちゅらうみと読んでください)
途中経過を問わず最後のひとくちは
サイゴンに行くまでもなくヴォワザンに決定して居たのだから
飲み干してやったと言う訳だ
  • ぎわら
  • 2018/06/08 (Fri) 02:12:34

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