有頂天
お題は、有頂天です。


どうでせう。

  • るるりら
  • 2019/01/22 (Tue) 18:40:25
有頂天
私は有頂天だった

物心ついた頃から鬱だった
昼に寝て夜起きる生活の始まり
人の気配だけで沈黙する
誰とも関わらない子どもへと
自分は徐々に育っていった

私は有頂天だった

遠巻きに噂する級友を尻目に
読めもしない本を見ていた
時には町中の落書きを見回り
居場所のない自分の友を探し
一人ではないと思い込んだ

私は有頂天だった

年頃になると恋もあったが
異常な興奮とそれに伴う妄想から
閉め切った無人の部屋を愛した
憂鬱症はますます酷くなり
もう誰の言葉も信用出来ず
自分自身の言葉さえも失った

私は有頂天だった

そして今朝七時の教室に一人
生徒指導の教師が廊下を清掃している
窓からここは四階だと確認し
身を乗り出すと朝の空気をいっぱいに吸う
着るだけの制服がはためく

私は有頂天だった
  • ネン
  • 2019/01/22 (Tue) 22:06:53
有頂天
どうも私の頭部は雲を突き抜けているようだった
今日に限ってこんなに晴れているのだから

旧約聖書に書いてはあるが
高みでは言語がちぐはぐになる
この感情を言い表せない私
どうせだったらさ
本当の本当に
向こうへつれていけよ

みんなを置いていかないように
これはどこかの奥底へ仕舞い込んでおくの
蝋の翼を捨てたのは正解だったね
いつかヒーターに近づけて
溶かしちゃうのが目に見えてたし

願ってもないことばかり神様は叶えて
願いは聞き届けてくださらない
私のためにピラミッドを 空高く(なくてもいいから)
ひっそりと建ててほしいのに
  • はさみ
  • 2019/01/22 (Tue) 22:08:55
有頂天(投票対象外)
◯天国
シーツ越しにバラを手折っている。あなたが駆けのぼるほどしぼむ花、壊れていく苔が、澄み切った水面で泡立っている。光の網目の上を歩いて、くちなしの花弁を踏む。真緑の葉を踏む。こごえた甲虫を踏む。ここは、やさしい死者が休みなく許されてしまう場所。切り取られるような風に目を閉じる。たとえば、何も見ようともしない、聞こうともしない、ひとつも自分で考えない、白い幽霊になるとしたら、そのときはあなたの伽藍に触れられるかもしれない。そう思う。

◯地中海
レモン菓子を敷き詰めたふろしきの口を閉じ、全ての病室を訪ねていく。先生、わたしには道化師の資格も道具もないけれど、(美しい風を横切ることはできる)せめて、つまらないお土産話をみんなにしてあげることはできないかと思ったのです。あたらしさが遠のいていく話。憎まれても困られても、どうしても登場することがやめられないから、「患者さん、あなたは、『雨季を呼ぶ人』と呼ばれている」先生、模造紙の話をしても良いですか、

◯模造紙
画家のようだと思った。星が干上がったあとの川底にぶどうを転がして、一粒ずつしなびるまで時間をかけて飲み込む。舐める。季節を間違えていてもいいから、どうかそのまま描き続けてください。先生はもういないけれど、名前の分からない街の人たちも、すぐに忘れてしまった病人たちもここにはもういないけれど、のぼるようにあなたの画布をちぎれば、(ココア色を点睛しないでください)「並木に掴まり歩きながら激風に耐えねばならなかった。のこぎりの縁についた水滴にひろがる空色。鉱物色。いっしょに歩こう、という言葉。たった一人で描き続けろ、という言葉。川底の石に垂らした青の絵の具。あなたの裸体にこぼす鈍色。あなたにとっての美しいもの、その色彩を三角片に砕いて、あなたの身体に貼り付けて描写する。」「画家、みたいだ。あなたは。」

◯有頂天
熱砂は濃くうずまいても、やがてかすれて過ぎていく。『雨季を呼ぶ人』が、今日は取り壊し間近の廃病院を訪ねている。「空は画布です。雨戸から滴る陽光がコートを温めている。コートの下には絵の具が塗り固められていて溶けない。画家さん、あなたにもお土産話をしてあげましょうか。
熱砂はやがて過ぎる。傷が治ったら、二人できっとどこにでも出かけよう。本屋の軒先で雨宿り、なんて響きがよいでしょう。」
あなたはたった今ものぼっている。窓を開けて、たばこの煙を一緒に上らせればあなたも含め誰も気付かなくても、何かの奇跡にはなるのだろうか。根まで掘りおこされた花に天が水を遣る。張り巡らされた光の網を通り抜けてきた雨水で、たばこの火を消そうと思って、できる限り腕を伸ばす。
  • からふとししゃも
  • 2019/01/25 (Fri) 12:03:17

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