むかしむかしあるところに大正という村で育った少女がいた
彼女は いつしか百歳を超えて
「敬老会に行っても 最近は若いモノばかりで つまらん」と言い
八十を超えている若い衆が ぐっと笑いをこらえた
むかしむかしあるところに昭和という町で そだった少女がいた
「最近の若いもんは 車ばなれしてて つまらん」と いいながら
どこかしらない美しい世界に いつまでも少女のように憧れていた
むかしむかしあるところに平成という街に そだった少女がいた
彼女は 万葉集におさめられているという梅の話を
いにしえの言葉のまま覚えようとしていた
そして いまも
すべての少女たちの すこし赤らめた頬が
春霞の向こう側に かすかに見えている
- るるりら
- 2019/04/01 (Mon) 15:13:21