詩を書きはじめたきっかけはなにかと問われると小学校中学年の時にクレヨン王国月のたまごの主人公に憧れたからと答える。彼女の書く詩にはあんまり興味を持てなかったけれど詩を書く女の子にはとてもとても憧れたのだった。とかく夢見がちな幼少期だった。大千世界の仲間たちはいると思っていたしアウリンのついた本も実在すると思っていた(もちろんファンタージェンもね)。のはらうたとことばあそびうたが好きだった。友達は数えるほどしかいなかった。公園に一本だけ生えた柳の木に心ではなしかけていた。散歩の犬が集まる築山にのぼっては犬を撫でた。世界は、わたしの中だけで完結していた。
私が、未来の塊でなくなったのはいつのことだろうか。一枚、二枚と子供を脱皮するにつれわたしの世界の構成員は増えていく。言葉を道具として扱っているとか言葉遊びはくだらないとかあれを読めこれを読めとか知ったようなことを言う人たちのなかで、私はわたしを見失ってしまった。書けなくなった、書けなくなった。
六年ほど前、言葉と遊ぶ人に会いました。私も遊んでいいのだと許されたようでした。言葉で遊ぶんじゃなくて言葉と遊べばいいのだと、教えてもらってから私の世界はわたしの世界につながれました。だからそれとなく行ってみようと思うんです。あの頃のわたしの幻影、それと、はなしに。
- こうだたけみ
- 2019/04/19 (Fri) 22:19:35