さらしを巻いたものがきた
これをほどいてほしいのです、といった
あーれー、といったかいわなかったかは秘密にしておく
ほとがれたさらしを残して去っていった
巻かれていたさらしだけが残されていた
さらしをほどいたものについてはなしをしよう
文字、を初めて目にしたほどいたものは読んだ
熱心にほとがれたさらしを読んだ
目を皿にして読んだ
または白眼にしたり寄り目にしたりして読んだ
文字、が何か分からずに読まれたさらしは捨てられてしまった
文字を知らないものに見られただけであった
読まれなかったわけではなかった
さらしはほどいたものからも取り残されたまま雨にぬれていた
はじめにさらしが、あーれー、といった場所には屋根がなかった
屋根だとおもっていた部分は青くなったり赤くなったり黒くなったり水を落としたりした
さらしには空を知らなかった
ある日、丁寧にさらしを畳んだものがいる
はじめに巻かれたときについた垢や
熱心に目をむけていたものが罵倒とともに飛ばした唾液や
ほこりや塵や
大地や太陽のにおいが一緒に畳まれていた
ぱらり、と畳まれた何かをめくるものがいた
そのものの指先が紙片から風を起こした
そのものの指先はタブレットに触れ優雅にページの残数を減らした
あーおもしろかった、とめくるものはいった
そのとき、はたと気がついた
さらしを巻いていたことに
さらしを巻いていたことに
- 生卵喰鳥
- 2019/07/02 (Tue) 18:43:42