即興ゴルコンダ（仮）

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シンプルに。

ではどうぞ。

左舷１０時の方向にアヴァロン島が見えてきた。あそこにアーサー王が眠り、九姉妹が林檎酒の盃を仰ぎながら女子会をしているのだなと思った。
僕は今、軍艦島に乗ってクルージングしている。あの有名な方の軍艦島ではなくて、とある過疎地の信仰対象になってる方の島だ。島の形状が軍艦の舳先っぽいのでそう呼ばれている。軍艦と言うには少し小振りだが駆逐艦や巡洋艦ではない佇まいをしている。外周がぐるりと絶壁気味の崖で高さ3〜4ｍ。かなり上陸困難だ。崖の上はこんもりとした森になっていて小さい鳥居が見える。鋭角で防御力の高そうなひょっこりひょうたん島を想像してもらえるとよい。大人は子供に崖の上に登ると神隠しに遭うぞとよく言っていた。はたして登って見たところ、なんと島が出航してしまったんですな。なるほどこういう仕組みの神隠しか。
先ほど、蜃気楼の中を突っ切った。近づけどもたどり着けない場所を内部から眺められるのも神隠しクルージングならではの醍醐味だ。灯りの正体がマックスバリュやファミリーマートの照明だったのは少しガッカリしたけれど。右舷後方より花火が上がった。あぁ、あれはきっとパノラマ島。反対側では浮上しかけたルルイエの神殿から蛸の怪物みたいのが出てきて漁船と戦っていた。次の日、目覚めると見渡す限りサンゴ礁。さてはこれはテチス海。遠くにちらっと見えているのがゴンドワナ大陸か。かと思えば大きめの島が立て続けに沈んでいったので、多分ムー大陸とかレムリア大陸とかアトランティス大陸とかのどれかだろう。
さて、この島影を眺めるだけの航海は一体いつ終わるのだろうか？潜水艦ではないから竜宮城には辿り着けまい。ははぁ、そういえば全てのモノが流れ来て全てのモノが流れ着くそういう場所があったっけ。
最終目的地、多分ニライカナイに向けてありもしない面舵いっぱい。ヨーソロー！