さいごの蜻蛉がいきをひきとった
かえりはくらい溜息で
宙返りする雲がふくらんで
そしておんなになったと囃したてる
くちびるはたくさんの蔦がからまるから
目のむきだけでゆくさきを伝えて
「いきはよいよいかえりは
かえるのは難しい、ね
はくちょうのむれ
やじるしの形で
これから子を授かるのだ
そらに溜息が凝って
あしもとをきゅっと鳴らした
うでのなかで
やわらかな寝息をたてる
この瘤はよい瘤かわるい瘤か
この瘤のために、わるくなろう
孵ることができるように
うしろをむいて
慰めてくれるひとがいる
めせんをずらしながら
ついたいきのいろ
満ち欠けに忙しいお月さまが
やさしく殴ってくれるのを
待っている
まっている
- 脈搏
- 2019/10/17 (Thu) 12:41:43