忘れたいのに忘れられない
あの時飲んだショコラの味
唇を噛む癖がある君
あの日も少し血が滲んでた
その薄赤い唇の向こうで
僕が別れを切り出すのを待つ
さようならと言いたくないのは
誰かの悪者になりたくないから
じゃあまたねと言わせないのは
僕じゃない誰かの物になるから
このまま僕が何も言わなければ
時間は永遠に止まるんだろうか
そう思えるほど長い沈黙の後に
君は静かに席から立ち上がって
微笑みながら去っていった
残された僕の正面に
君が頼んだショコラのカップ
飲み口に残る赤い血の痕
躊躇せずそれを口に運んで
僕もその場を後にした
忘れたいのに忘れられない
あの時飲んだショコラの味は
微かに苦く、甘い血の味
君が残した最期の記憶
- 愛萌
- 2020/07/14 (Tue) 22:41:52