花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように
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  • AB
  • 2020/07/31 (Fri) 22:12:19
花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように
あなたはかぜにゆられる
もりの木の幹であったのよ、と

再生紙で作られた灰色の折り鶴は
渋谷のスクランブル交差点に捨てられ、
雨に濡れた嘴を天に持ち上げた時に言われた気がした

ように、踏みつけられ、
踏みつけた足は新聞紙に包まれた折り紙のような花束を
大事そうに抱えて、
いくつもの改札口を抜けて、
街の中の霊園の墓前に飾るけれど、
そこで祈る意味を忘れてしまっていることに気がついてしまう

隣の墓には、名前の掘られた湯呑みが置かれていて、
苔むした墓石の側面には先祖の名前が並んでいるけど、
空襲で焼かれてしまった一族であるし、
少子化も進んでしまって、
という理由で、ここに出向く人間がどこにもいないのは知っているから、
一本だけ花束から抜き取り、
湯呑みの中に薔薇を生けたっていいじゃないかと、
足跡は考えるけれど、

それは、どこまで流れ着いても、
ようにでしかないのだと、

また、踏みつけた折り鶴に言われてしまう、
折り鶴にも昔骨があったし、
骨は粉々に砕かれて、
技術という釜の中で何度も紙にされて、
真っ赤な薔薇みたいに
赤く染められたのだから、

生きている間に、
渡しておけばよかった
お花を、
死んでから渡されてもしょうがないかもしれないけど、
生きている時にもらって嬉しい花を
あなたに捧げてしまってもいいじゃないか、
と、
見ず知らずの墓石に、一本の折り鶴を
重ねると風が吹いてくる
都会の霊園に薄らと舞う
油の臭いがドブ川から湧き上がってくる

それらを運んでくる
あらゆる交差点が、問いかけてくる問いに押しつぶされて
私もまた、二度とここに帰ることはなくなる、
箒星になる
  • たばすこ
  • 2020/08/01 (Sat) 00:50:00
花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように
コンセント。使わないテレビカード。シーツ。太いパイプの上。強弱のある時計の音。
この風景はわたしの断面。

千羽鶴を折るとき、鶴の羽を広げてはいけない。きれいに重なることができないから。一房の虹。その隣で、

熱っぽく輝くガーベラたちがわたしのために咲いてくれたのかどうか、確かめる術を教えてもらうためとはいえ、コレは押せない。
ガーベラの真ん中にも似た重なり合いの中から鶴を一つもいだ。やって良いことと悪いことがある。丁寧に剥がして中身をみた。花みたいに拡がった。雄しべと雌しべ。花弁と萼。どれもあった。

お母さんは悪くない。お父さんも悪くない。友達も悪くない。わたしが、いけない。

一度咲いた鶴はもとに戻せなかった。考えが甘かったことを知る。みんなは、わたしを、もういちど。それはむずかしい。

しわくちゃになった紙を撫でる。指先。思うように力が入らないよ。それはいびつな紙飛行機へ。あなたたちへ向かって、わたしは翼をひらいたんです。こんなふうに。少しだけ風に揺れながら、わたしはわたしを離れて落ちていった。だけれど、ながいこと時間をかけて、戻ってきた。拾い上げてくれたから。

泣いても笑ってもくしゃくしゃの顔でも、きれいだと言ってもらえるかな。そうだといいな。そうだといいなと思う。
  • みわ
  • 2020/08/01 (Sat) 17:37:46
花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように
この星の何人かは
ちいさめの正方形の紙を見かけると
戦争が終わった後だというのに
戦争のせいで病み 快癒を折り紙に託しながら
亡くなった少女のことを思い出す

紙の角と角を 合わせて
鶴に嘴をつけるときは 微妙に個性的な表情がつく
そして 均整のとれた形の中央に
繊細に 息を吹き込む


少女の折り鶴は ガラスケースにいれられて
うやうやしく 原爆資料館に保存されているが
いままさに うまれようとしている 折り鶴も
最後に息を吹きこむと完成だ

細心の注意がそそがれて 紙は息をうけて すこしだけ ゆれる
ふくらみに とどまる息が やはり生きたいと言っている
  • るるりら
  • 2020/08/01 (Sat) 21:22:36
花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように(時間外)
あの時、僕が慰霊碑に手向けた花束は
入口すぐ隣の花屋から数百円で買ったモノで
それは僕の意志で買われたモノではあったが
その意志は自発的なモノではなく
入場料ではなくて、お気持ちの問題ですわ
と、答えた女主人の醸し出した
買わざるを得ない雰囲気によって
なかば強制されて買ってしまったモノで
なんだか萎れていると思ったら
献花された後に回収され
何度でも店先に並ぶというコトを
後日、知ってしまったようなモノで
そもそもユリの花でもなかったし
女主人の訛りからして地元の人でもなく
なんならこの国の人でもなかった、ような
そんな気がするから僕は
今日も今日とて
世界が滅びゆくサマを
憂いたり、嘆いたり、嘲笑ったりする、ような
そんな詩ばかり書いている
などと
何かの言い訳に利用されたり
あくどい商売に利用されたり
プロパガンダに利用されたり
さんざん利用され続けてきた
彼女たちの報われぬ魂に
誰か穢れのない花束や
折り鶴の群れや一編の詩、などを
どうか捧げてあげて下さい
僕ではない、もっとマシな誰かが

  • まいきー
  • 2020/08/01 (Sat) 22:17:33
風待ち(元ネタ、投票対象外)

風待ち


一昨日のテレビで
はじめてその意味を知った子供が
二時間半泣き続けて寝た
男は泣き顔を見られちゃだめなんだ
と言いながらも
その子が愛しくて仕方がない
生きて行くと
心や脳にいくつものスクリーンがかけられ
漏れてくるものが
世界の全てになったとしても
花火、キリコ、エイサー
囃子、漁火、風車
を見ながら、聞きながら
空を見ながら
虫の声を聞きながら
風の音を聞きながら
ときおり
声をあげて泣いてもいいかい
と、痛む胸と
深い寝息の顔に問いかける
答えはまだ見つからない
のか
もうずっと前から
そこにあるのか
そのままに生きてゆく
世界の全てが優しさで包まれるように

花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる
ように






  
  • AB
  • 2020/08/01 (Sat) 22:23:42

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