なかなかむずかしいたいとるだ。というのは、なかなか妙をついたタイトルであるからだ。森に生えた木は海を知らずにその場で死んでいくのに、どうやって海を知るのだろうということを考えた時、森に生えた木には渡り鳥たちの言葉を聞くことができるかもしれないとか。自分と同じ仲間の木が存在しない場合、ああ、これはここの生まれではないのだなと悟り、遠い向こうにチラつく海岸線を見つめて、海を恋しがるのかなとか。そもそも森が海の近くにあるのかどうかもわからない中で、また、木の一本が海を恋しがっているわけではなく、森というある種の群体が海という塩水に満たされた平面の世界を求めているという所を考えだすと、これはなかなか難しい。しかし、森に意識があり、感情を表現することができたのであれば、森というものは生まれからして最初は海に漂う海藻だったものたちが、陸上に上がり、土地を埋め尽くしたという歴史がある。いわゆる石炭紀のことである。昔、生き物が陸上する前の大陸の王様は植物であり、森だった。
今は人間に海岸の多くを奪い取られ、森は体力を失いかけている。開かれた土地は人のために耕され広がりを見せる乾いた海である。しかし、森は人にとって陽の光を覆い隠し、魔のものを封じ込める魔の海であった。と考えれば、森はもうすでに森ではなく、開かれたただの場所なのかもしれない。
話を戻そう。森が海を恋しがる時、森の中の海はわかめのように海流の力で漂っていたいのだと思われる。また、地上の森は常に光の奪い合いであって、森の中の王は陽の光を浴びることができるが、今から生まれて育つ苗木にとってはこの年功序列を勝ち取るのは至極大変なので、海の中でみんな仲良く漂って居た方がやはりましなのであった。
- たばすこ
- 2020/09/19 (Sat) 18:04:47