暗い通路。藍の窓。部屋番号は変わらない。何度も何度も、この電気メーターの
横を通り過ぎたのは覚えている。そして同じ回数、すれ違った街。見慣れた漢字
はそこにはもう少ない。送りがなや繁体字は、ながくて、こみいっていた。曰く、
明晰な思考の、邪魔をしていたのね。
その点、あなたはどうだろう。私が送信できるのは、2バイト文字にして5文字
の題名の詩。過去に送るアドレス指定にそのうち2文字が必要で、実質3文字。
詩ばかり書いている、時代。題名で語らないための文字数制限。家路の話に戻り
ましょうか。どうにもならないかどうかは、家に帰ろうとしているその道をその
通りに歩くかどうかで決まる。どうして私の足は、いつも、その方角に家がある
と言う理由で同じ道を歩くのかしら。堂々巡りに似ている。私はそれを、帰宅だ
と思っている。みんなそれを出勤だと思っていた。
暗い通路、藍の窓。
だからこうなった、ということをここに書くつもりもない。因果関係は詩ではな
い。意味めいたことも詩ではない。伝送路にはじかれてしまう文章も詩ではない。
人が減り、患者が増え、浮かない気持ちで日経平均が上がり続けるのを眺めて、
いってきて、帰ってきていた。今思えば、それが堂々巡りのようだったって、今
も同じなのだけれど。部屋番号は変わらないのだけれど。あなたの時代に、どう
にもならない、なんてことは、なかったんだけれど。
- たかは
- 2021/01/18 (Mon) 19:11:36