あなたにとって僕は
いつでも居心地の良い、いえ
開かれた扉は常に
あなただけに向いている
そして
寒い日にはぬくもりを
暑い日にはすずやかに
あなたを決して傷つけず
ただ微笑んで待っている
恋に破れた日には
肩とハンカチを差し出し
夢に挫けそうな時は
優しくその背中を押す
あなたにとって僕は
そんな居心地の良い、いえ
それでいいと思った
それでいいと思っていた
けれどある時
あなたが言った
もういいの
もう大丈夫
その残酷な告白に
僕の中の何かが壊れた
最期にあなたがやってくる日
僕は微笑むのをやめる
雨が降ればきれいな傘を
陽射しには似合いの帽子を
きちんと用意しておきながら
決してあなたに微笑まない
いつも着ない服を着て
いつもしない髪型で
あなたの隣に座るだろう
あなたは気づくだろうか
ここは居心地の良い、いえ
ではなくなったことに
そして僕は
開かれていた扉を
そっと
後ろ手に
閉じる
- 愛萌
- 2024/01/25 (Thu) 11:06:21