俺たちに必要なのは、もっと庶民的な、よく研げる、普段使いのどれいだ
「よう、こんなになってもどうするよ?」
返事はいつも決まっていて、俺があいつであいつが俺で、ナザレの果ての朴念仁の世界へつれていってくれたみなしこたまの船乗りたちだ。船頭の名前を序破といった。
「ジョハはさ、ひっくるめてみんな好きになってんのな、いいぜそういうの、俺はいいとおもう」
普段使いってさ、それって。
退屈してないか?と父が尋ねる
まあぼちぼちやってるよ
「これからお前の行く道は苦難の道だから、俺が途中まで白馬にのせてつれてってやるぞ。いいか、これはとってもとってもとくべつな、高級のことなんだぞ」
白馬に乗るなん初めてだった。とてもとてもとても、とてもきれいでうつくしいタテガミ。うっとりするようなにおいがする。あの海辺で付けるクリーミーみたいなバスの
「ついたぜ、こいつ、お前のこと気に入ってるな」ジョハは言った。馬がべろべろ顔をなめた。
そこからは、ジョハのゆうじんの独壇場だった。馬のけつ、虹色の味のするけつを齧ったらどうなるだとか、ほんと、なんだか比喩がすげーんだ。
猿芝居みたいにも見えた。最強のギグだとそれでさとった。
「随分調子いいみたいだな?」
まあな、と友人は答えた。だがそれで十分だったんだ。
鈴の音が消えて、夏が消えて、砂漠が残った。
- A
- 2023/07/15 (Sat) 05:14:30