子供の頃、その公園の絵を描いて賞をもらった。
合唱コンクールでいい所までいった歌が好きな歌になったように、
好きな花の詩を書いたらもっと好きな花になったように、
その公園で遊ぶ時の空の色、緑の草原に合わせたらかえって浮いてしまった緑色のタイルの不思議な感じ、自分はどんな服装で遊んでいたかと想像した服の色、一つ一つ考えて絵の具を混ぜたことを、
その公園で過ごした時間そのものを、いいねと言ってもらえたような気がして、
前より少し好きになった。
その藤棚は丁度いい高さの所で幹がうねっていて、とても登りやすかった。
見慣れない町に来て、風景にも、少し訛っている子供たちにも馴染めず、どうにも田舎くさいのが嫌で嫌で仕方なくって、
早く大人になりたくて、そうすれば住みたい所を自分で選べるのに、
とふてくされていた転校先の小学校の校庭にその藤棚があった。
ただ他に人のいない所に行きたくて、登れることに気づいたら登っていた。
危ないから登ったらいけないのだろうけど、とにかく、
特別な場所にいる自分がすごいことをしている気分になった。
その高台から町を見下ろしながら、そんなことを思い出していた。
しばらくこの町で暮らさなければならなくなって、私は暇ができたら心地のいい場所を探して歩いた。
馴染みのない道や建物もそこからならすっかり視界に収められて、斜めに当たる西陽が風景を優しくして、ああ、怖がる必要はないのだと思う。
町の風景をまるごと好きになったなら、きっと町のことも好きになれるから。
- 白
- 2023/07/29 (Sat) 00:06:56