玄関あけたら、くまがこわいかおして両手をあげていた。
おもわずドアをしめてしまった。
そうだ、営業communication研修で教えてもらった3秒ルールを実践してみようと思い立った。深呼吸してからドアをあけ、くまの吊りあがっている目をみて、
満面の笑みをうかべる。わたしはくまがすき、わたしはくまがすき、くまがわたしをすきと、こころのなかでおもって。
「はじめまして、くま、よろしくね」
さんをつけた方がよかったか?いやまてよ、これは、くまからの3秒ルールだ。くまが、わたしの家に訪問したんだから、わたしからは、おかしいだろ。そんなこんなで、
「How You doing!?」くまがゆう。
はっ?英語だ。
「うん」とこたえた。
「南アルプスからきた」と、くま。
わあわあ!大好きな南アルプス!テンションあがるわたし。
「わあ、同じ静岡市民だね!」
「だから、なに」と、ひややかなくま。
なが──────い沈黙
「あのさあ、阿トさん」と、くま。
えっ、くまが、わたしのなまえを知ってる。
なんで?
「秘密のルール(仮)ってさあ、わけわかんないわけぇ」と、くま。
えっ、あっ、あっ、なにゆってんのくま。
へやにずかずかあげってきて、くまなのに、ねころぶ。
「ビールでしょ、出すでしょ」と、くま。
水曜日の猫をくまにわたす
「ぷはー」と、めじりがさがるくま。
水曜日の猫を一気飲みするくま。
「でだ、つまりな。水曜日の猫を一気飲みしたらな、猫と糸電話一回チケットがもらえる、とかな、豆腐の角で頭をぶつけたら、おからならぬ、おけらになる、とかな、
かぼちゃの種を海に投げたら、王子様が馬車に乗って現れるとかな、下駄の鼻緒が切れたら、夜中2時に虹が出る、とかな、なななっ」くまは、まくしたてる。ゴルゴンダ(仮)を、みていたんだな、くま。わたしは、
おもしろくないくまの話しに、ただ、低いテンションで「うん、うん」と、返事をする、まっ、とりあえず、わたしも水曜日の猫を一気のみした。
緑色の風がふいた。
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「緑色の風をみたら、仮の詩人になれるってことなんじゃね」くまがわらった。
- 阿ト理恵
- 2023/08/25 (Fri) 22:22:14